１３．均衡財政乗数の定理（改訂）.pptVIP

* 　これは例えば、均衡財政を維持するため、政府支出を2兆円増加すると同時に2兆円だけ増税するという政策を行ったとき、国民所得は2兆円だけ増加する、ということを意味しています。 　ところで、政府支出乗数とは、国民所得の増加分ΔYを政府支出の増加分をΔGで割った値、つまりΔY/ΔGのことであると定義しましたが、ここでの政府支出乗数は、 ΔY/ΔG＝1 となります。 * 　このように、政府が均衡財政を維持しつつ、ΔGだけ政府支出増加させると同時に、ΔGだけ増税を行うという財政政策を実施したとき、国民所得の増加分ΔYは政府支出の増加分ΔGに等しく、政府支出乗数が1となることがわかりました。これを、均衡財政乗数の定理と呼びます。 　市場経済を採用している社会では、景気の良い時期（好況）と景気の悪い時期（不況）とが交互に訪れます。これを、景気循環と呼びます。景気が良いときには、多くの企業の業績が良くなり、人の生活が豊かになります。しかし、好況は永遠に続くわけではなく、やがては不況がやってきます、景気が悪いときには、企業の業績が悪化し、解雇や失業が増加したり、倒産する会社も出て、生活に困る人も多くなります。また、好況から不況への転換が緩やかであればまだよいのですが、あまりに極端な好況（バブル経済など）が生じた後には、恐慌と呼ばれる急激な景気の悪化が生じることがあります（いわゆる「バブル崩壊」など）。景気循環のたびに「天国」と「地獄」を行ったり来たりするのは、あまり望ましいことではありません。景気はなるべく安定している方がよいのです。 * * 次に、所得税の自動安定化装置（ビルト?イン?スタビライザー）としての機能について考えます。 　よく知られているように、経済には、景気の良い期間である好況と景気の悪い期間である不況とが交互に訪れます。これを、景気循環と呼びます。 　景気が良いときには、所得がどんどん上がり、欲しいモノを自由に買うことができます。しかし、反対に景気が悪いときには、所得は下がりますし、場合によっては、失業というかたちで所得がゼロになって、生活に困ることにもなりかねません。このように、景気循環のたびに「天国」と「地獄」を行ったり来たりするのは、あまり望ましいこととは考えられません。むしろ、景気が良くても悪くても、ある程度恵まれた生活水準が持続して営める方が望ましいと考えられます。 * これから説明するように、所得税には、景気の拡大を抑えるかわりに、景気の悪化を防いで、景気の変動を自動的に安定化させるという機能が備わっているのです。では、詳しく解説して行きましょう。 * 　世界の多くの国では、個人の所得に応じて納めなくてはならない税金の額が決められるという所得税の制度が採用されています。これは、所得の高い人ほど税金を多く支払うという考え方が、常識的に公平であると考えられているからです。 　所得税が採用されている場合には、国民所得Yが大きくなるにつれて、租税Tも増加するという傾向があります。ですので、これまでの租税Tが一定であると仮定してきましたが、これはあまり現実的ではないのです。そこで、この仮定を止めて、租税Tが国民所得Yの増加関数であるとしましょう。 * 　ここで、簡単化のために、租税Tが国民所得Yの一次関数であるとします。つまり、 T＝T0＋tY であるとします。 　ここで、T0は独立税収と呼ばれ、政府の税収のうち、国民所得Yに依存しない部分のことです。また、tを所得税率と呼び、0より大きくて1よりも小さい値をとるとします。 租税Tが国民所得Yに依存するとき、家計部門の消費関数は、 C＝C0＋c(Y－T)＝c(1－t)Y＋C0－T0 となります。 * 　いま、国民所得が10兆円だとしましょう。このとき、家計部門の消費は、10c(1－t)＋C0－T0（兆円）となります。次に、国民所得が1兆円増えて、11兆円になったとき、家計部門の消費は、11c(1－t)＋C0－T0（兆円）となります。よって、国民所得が1兆円だけ増加したときには、消費はc(1－t)（兆円）だけ増加します。つまり、租税Tが国民所得Yに依存するとき、限界消費性向はcではなく、c(1－t)となります。 * 　ここで、注意しなければいけないのは、租税Tが一定であると仮定したときでは、国民所得が1