スライド集「栽培環境シリーズ」製作のねらい.docVIP

　農業?農村の労働環境　　導入編　(1)　　　　　　　　　　　　　　　　　　 －　農業?農村の労働環境について　－　 農作業を健康に行なうためには、振動、騒音、疲労という直接のケガではないが、人体に独得の障害を与える要素について、基礎的な知識とその対策が必要となっている。特に、近年、農作業にたずさわる年齢が上がり、婦人の機械利用の機会も増加する中で、基礎的な労働環境の改善と基礎知識の習得、安全知識の徹底は焦点の一つになっている。しかも、安全へのとりくみは、一個人が所有する機械だからといって、決して個人の力だけでは前進しないのは言うまでもない。どうしても農村（地域）ごとにいろいろな力を結集して労働環境の改善にとりくむ以外に効果はあがらない。 　農作業事故についても、直接の事故部位を確定するだけではなく、何故その部位で事故をおこしたか、その背景を徹底して詰めなければ第三者に他山の石となすことはできず、同一の農村（地域）でまた同じ様な事故がくりかえされることになる。農業生産にたずさわる人は、より詳しく自分たちの地域の労働環境をどうとらえ、どう対処するかを検討、話し合い、改善策を見いだす必要がある。 Ⅰ　農業生産と健康 １．生きものを中心とした生活リズム 耕起や運搬の手段が家畜や人力だったころ、家畜にエサや水をやったり、夕方には休ませるなど、作業はきつくても、そこには生きものを中心としたリズムがあった。 ２．機械化による生活リズム しかし、現在では、機械で大面積をこなせ るようになり、昼間の休みをとらなくても、また、夜遅くまででも、作業をつづけることは可能でである。小さい面積をやる場合でも、その日のうちに無理しても仕事をこなしてしまおうとすれば、一日の作業量は結局膨大なものになる。疲れを知らない機械は作業の延長にはいくらでも応えることができる。　 ３．機械化と健康障害 　機械の能力だけにあわせた作業のしかたでは、私たちの体に疲れがたまって思わぬ事故のもとともなるし、機械の振動や騒音は、体の機能にも様々な影響をもたらす。機械による作業を安全に、しかも健康に行なうにはどうしたらよいか、振動や騒音、そして、機械作業による疲労の問題を考えることが重要となっている。 　 Ⅱ　振　　動 １．トラクターと乗用車の運転者の振動 　写真左は、トラクターのボディーと、トラクターに乗っている人のヘルメットに豆電球をつけて凸凹のある道路を時速8～9キロで走らせ、光のあとをみたものである。光の線は、図のように道路の凸凹に応じて激しく上下している。 　写真右は、電球を乗用車のボディーにつけた場合で、さきほどのトラクターと全く同じ道路を時速20キロで走ったものである。同じ道路を走っているのに、光のあとはほとんど一直線になる。 　 　実際の作業を考えてみてもトラクターを運転するのは、けっして平らな道路ではない。しかも振動を吸収する機構をもつ乗用車だったらあまりゆれないような条件でもトラクターでは大きくゆれる。このように農業機械を使った作業では、人体にかなり激しい振動が加わっている。振動は私たちの体に悪い影響をもたらす。 ２．白ろう現象 　右の写真の手先が白くなっているのは、いわゆる白ろう現象を示しているもので、冷たい水につけた時や、寒い風にあたったときに手先が白く冷たくなる振動病のあらわれである。チェンソーを使う人などで問題になったが、耕うん機と草刈機を長時間使っている農家に白ろう現象の出たこともある。 ３．手腕の振動病の形成 　この現象は、振動、騒音、寒冷という三つのストレスが人体に繰り返されたときにおこる手腕系の疾患である。 　手や足に振動が伝わると抹消の血管は防衛反応として収縮をおこす。当然、血の流れが悪くなって筋肉や神経が血液不足の状態となる。そしてこれが繰り返しておこっていると、血管の壁が厚くなり、神経にも障害があらわれ、筋肉の疲労から萎縮へという経過をたどっていく。 騒音による興奮状態の連続も疲労から体の各種の機能低下などをもたらし、これらが寒さとあいまって振動病を形づくっていくのである。 ４．耕うん機流早産 　機械の振動による障害としてかつて大問題となったことに、妊娠した人が耕うん機を使用すると、7～10％ぐらいの人が使用中または使用後に、腹痛や出血がはじまって流産や早産をおこす、という耕うん機流早産があった。 （注）小諸厚生病院　飯島貞司氏の耕うん機流早産の定義は次のとおりである。 ”耕うん機流早産とは使用中あるいは、使用後に腹痛?出血がはじまり、ひきつづき流早産をおこしたものをいう。“ ５．耕うん機流早産の実態 　左の円グラフは、長野県において妊娠中に耕うん機を使用して流早産した人の、耕うん機の使