基礎から分かる生物.PDFVIP

基礎から分かる生物 筋収縮 1．骨格筋の構造 ① 骨格筋の構造 骨格筋は筋繊維という多核の筋細胞が多数の束になったものである．筋繊維はさらに筋 原繊維が束になった構造となっている． 筋原繊維は筋節(サルコメア)が配列された構造で，横紋が見られることから，骨格筋は 横紋筋とも呼ばれる．骨格筋は意思によって制御できる随意筋である． ② 横紋筋の構造と収縮のしくみ 筋節は細いフィラメントであるアクチンフィラメントと太いフィラメントであるミオシ ンフィラメントが交互に配列し，Z 膜によって仕切られた構造をしている．ミオシンフィ ラメントがある部分は色が濃く，暗帯と呼ばれる．ミオシンフィラメントと重ならず，ア クチンフィラメントのみの部分は色が薄く，明帯と呼ばれる． 収縮するときは，それぞれのフィラメントの長さが変化するのではなく，ミオシンフィ ラメントの間にアクチンフィラメントが滑り込むようにして，筋節の長さを変化させるこ とで収縮する． 11 弛緩時 筋節(サルコメア) ミオシンフィラメント Z 膜 アクチンフィラメント 暗帯 明帯 収縮時 2．筋収縮のしくみ ① 筋収縮のしくみ (1) 運動神経の末端からアセチルコリンが放出される． (2) 筋細胞が興奮し，筋小胞体からカルシウムイオンが放出される． (3) カルシウムイオンのはたらきによってミオシン頭部が活性化し，ＡＴＰが分解される． (4) ＡＴＰのエネルギーによって，ミオシンフィラメントがアクチンフィラメントをたぐ り寄せ，収縮する． 12 基礎から分かる生物 ② 収縮の種類 (1) 単収縮 刺激によって筋肉は収縮し，すぐさま弛緩する．このような一回だけの収縮を単収縮と いう． (2) 不完全強縮 筋肉を連続で刺激し，その間隔を短くすると，弛緩の途中で次の収縮が始まり，収縮の 度合いが少しずつ大きくなっていく．このような収縮を不完全強縮という． (3) 完全強縮 不完全強縮よりさらに刺激の頻度を増やすと，収縮の途中で次の収縮が起こり，収縮の 度合いはさらに強く，持続的になる．このような収縮を完全強縮という． 13 (4) 筋肉の種類と特徴 筋肉の種類 特徴 骨格筋(横紋筋) 随意筋 収縮力が強い・疲労しやすい 心筋(横紋筋) 不随意筋 収縮力が強い・疲労しにくい 内臓筋(平滑筋) 不随意筋 収縮力が弱い・疲労しにくい (5) そのほかの効果器 分泌腺 中枢からの指令によって物質を分泌する器官を分泌腺という． 例 唾液腺…唾液の分泌 汗腺…汗の分泌 消化腺…消化液の分泌(胃液，すい液，腸液など) 発光器 ホタルなど 発電器 デンキウナギなど 14 基礎から分かる生物 次の文章を読み，以下の問に答えよ． せきつい 脊椎動物の骨格筋は 1 と呼ばれる細長い細胞が集まってつくられている．さらに細胞内 には，多数の 2 という収縮性をもった繊維が含まれている．