「磁気圏 オーロラを起こす」三好由纯 .docVIP

三好先生　 ２.磁気圏　オーロラを起こす ＜一般的な質問＞ ＊「磁場中に飛ぶ自由電子の軌跡」について簡単に説明して下さい。フレミングの左手？ 「磁力線に“沿って”電子が飛ぶ」というイメージを理解したい。 （答え）磁場中の荷電粒子（電子、イオン）の運動を、磁力線に垂直方向と平行方向にわけて考えてみます。まず、垂直方向の運動は、磁力線のまわりを回転する円運動になる性質があります。これをサイクロトロン運動と呼びます。一方、磁力線方向には、ある初速度が与えられれば、磁力線に沿って動いていくことが可能です。この垂直方向と平行方向の運動をあわせると、磁力線のまわりを、粒子がらせん状に巻き付きながら進んでいく動きとなります。 ＊オーロラを見たいのですが、どこでどんな時期かの資料情報は得られますか？寒い時以外夏でも見えますか？ 　（答え）オーロラの発生には夏?冬は関係ありませんが、オーロラが見える高緯度地域は、夏の場合だと、一日中太陽が沈まない白夜の期間になりますので、オーロラを見ることができません。 　　なお、オーロラの関連情報（どこで、いつ見えやすいをまとめたものや、オーロラのライブ中継など）は、インターネット上にたくさんありますので、ぜひのぞいてみてください。 ＊磁力の向きに逆行して南極方向へも電子は飛んでいくのですよね。でも、磁力線の流れには従うから、極以外の場所ではオーロラは発生しないということですか。時々、フロリダでも磁気嵐が強いと発生するのは、電子の飛ぶ確率が高まるからですか？ 　（答え）書かれているように、磁力線と同じ向きあるいは逆向きに、電子は磁力線に巻き付きながら飛んでいきます。オーロラが発生するのは、磁気圏ではプラズマシートと呼ばれる領域に対応する部分で、この領域は、極地方の磁力線と結ばれています。したがって、通常の場合、低緯度ではオーロラを見る確率は低くなります。しかし、磁気嵐のときには、磁気圏側ではプラズマシートが通常よりも地球に接近し、電離圏側ではオーロラ帯が低緯度に動くことが知られています。このようなときには、ふだんオーロラが見えないようなフロリダなどでも、オーロラを観測することができるようになります。 ＊磁場の強弱はどこから？（南北緯度、経度と関係あると思ったけど、他にも???？） 　（答え）地球の磁場の構造は、巨大な棒磁石におきかえて考えることができます。棒磁石の場合、磁場が強いところは、棒磁石に近くまたN/S極に近いところです。したがって、地球の場合、極地方で磁場が強く、低緯度で磁場が弱いことになります。ところで、地球の巨大な棒磁石の方向は、地球の自転軸と一致しているわけではなく、斜めに傾いておりかつ棒磁石の中心が地球の中心とずれていることが知られています。したがって、地球の表面の同じ緯度の場所でも、磁場の強いところ、弱いところがでてきます。 ＊太陽風にのってきたプラズマが地球の夜側にたまって、あるきっかけで磁気圏から電離圏にやってくるとおっしゃっていましたが、あるきっかけとは何ですか？ 　（答え）太陽風の磁場が南を向いた状態がしばらく続くと、地球の夜側に太陽風の磁場とくっついた磁力線（再結合した磁力線）がどんどんと運ばれていき、夜側に磁場のエネルギーとしてたくわえられていきます。この状態がある臨界点に達すると、磁場のエネルギーが開放され、磁気圏側では、磁力線の形状が大きく変形したり、高速のプラズマが飛び出したりします。このとき、同時に磁気圏から大量の電子が電離圏に向かって流れていって、爆発的なオーロラを輝かせます。この一連の変化をサブストームといい、磁場のエネルギーがたくわえられている期間をサブストームの成長相、臨界点に達した後の期間をサブストームの爆発相といいます。 ＊衛星観測が行われるようになったのは、ここ30年間くらいだと思いますが、アニメーションで見せていただいた太陽－地球の作用はここ数十年で急激に明らかになったことですよね？まだまだ仮説が多いのでしょうか。数十年前に比べて格段に明らかになった部分はどこですか？衛星がない時期にも分かっていた部分はどこですか？ 　（答え）1958年に人工衛星による観測がはじまってから、磁気圏全体の構造やそこで起こっていることについての理解が急速に進みました。特に、オーロラの爆発的な増光が、磁気圏の夜側の爆発現象と関連しているという事実は、人工衛星-地上観測が明かにした大きな成果でした。講演で見て頂いた磁気圏の形状は、もちろん目では見ることができませんが、人工衛星、地上の観測データやコンピューターシミュレーションをもとに、現在多くの研究者が正しいと考えているものです。しかし、オーロラ電子を加速する電池の正体や、