教育内容-筑波大学法科大学院.PDFVIP

第２章 教育内容 第２章 教育内容 １ 総説 (1)カリキュラム編成上の基本方針 当専攻が想定する主たる学生像は、当専攻に入学するまでの間、法学の体系的知識獲得 の機会を持たなかった有職社会人である。このため、当専攻の課程は、つくば市の本学本 部キャンパスにおいて行われる学士課程とは、内容的にも、また組織上も完全に独立して いる。したがって、学士課程との一貫教育や合同授業、学士課程授業科目の履修を前提と した教育の実施等、法曹養成に特化した法科大学院教育の完結性を損なうような措置は一 切行っていない。 当専攻では、有職社会人学生が日常において現実に割くことのできる極めて限定的な学 修時間内において法学の体系的知識を効果的に獲得するため、特に体系的知識が要求され る法律基本科目群について、以下３で述べるとおり、三段階の科目体系を採用し、体系的･ 反復的教育を通じ、法曹としての実務に必要な専門的な法知識、思考力、分析力、表現力 等の修得を完結させることを目指している。このうち特に法学未修者コース２年次 （以下 特にことわらない限り、法学既修者１年次を含む）以降においては、主として演習形式の 授業を実施して、法曹として実務に必要な思考力、分析力、（討議、文章表現の両面におけ る）表現力の涵養に努めている。以上のような三段階の科目体系を通じ、学生が同一の法 的問題を複数の視点から複合的に学ぶことにより、柔軟かつ深い法的体系的思考を身につ けることができるよう配慮している。 また当専攻は、理論的教育と実務的教育の架橋を目指して様々な工夫を行っている。ま ずカリキュラム面では、多様な法律実務基礎科目を必修科目または選択必修科目として開 設し、履修させることにより、既述の法律基本科目群により得た理論的・体系的法知識を 実務的観点から応用・発展させる機会を充実させている。さらに当専攻では、法曹として の高い責任感と倫理観を備えた人材を養成するため、法曹倫理に関連する実務教育にも重 きを置いている。すなわち「法曹倫理I」（弁護士倫理）、「法曹倫理II」（裁判官・検察官倫 理）においてはもちろん、他の実務系科目等においても、法曹としての単なるスキル修得 に留まらず、実務法曹としてふさわしい倫理の獲得に十分に配慮している。さらに、実務 臨床科目の中でも、実際のクライアントと接しつつ、実践的に法曹としてのスキルと倫理 を修得することができる 「リーガルクリニック」を重視するという視点から、その学修の 基盤となる法律事務所が校舎内の同じフロアに併設されている。 8 第２章 教育内容 (2)有職社会人学生への配慮 有職社会人学生の通学を可能とするため、当専攻の開講時間は月曜日から金曜日の夕刻 （18 ：20～21 ：00）及び土曜日（10 ：20～17 ：50）としている。また、出張等で通学が困 難な学生が、出張先から授業に参加することを可能にするため、平成28 年度より、インタ ーネットを通じて受講することで授業の出席が認められる制度を開始した。なお、平日夜 間及び土曜日のみという当専攻の開講形態の特性上、必然的に開講時間帯と開講コマ数が 大幅（一般の昼間開講の法科大学院との比較で半分程度）に制約されるため、平成25 年度 までは、同一時限上に複数の選択必修科目を重複して開講せざるを得ない状況が生じ、結 果的に学生の選択可能性を制約してしまうケースも間々みられたところであった。これに 対し、開講期間・方法を工夫することにより、平成26 年度以降の時間割では、同一時限上 に複数科目が開講されるケースは、一部を除き、極力回避されている。 当専攻では、理工系出身者を含めた他学部からの法学未修者を多く入学させてきており （第６章表２‐２，２- ３- ２および４）、また法学部出身者といえども、入学時の年齢が毎 年度平均35～40 歳であること （第６章表２- ３- １）を考慮すれば、一般的な意味の法学部 出身者とは全く異なっているため、これらの者に対する法学の基礎力の涵養に開学当初か ら努めてきた。こうした経験を踏まえ、平成26 年度入学未修者より、１年次に配置される 法律基本科目を憲法・民法・刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法の５法に限定することで、純 粋未修者でも無理なく基礎力の充実を図ることのできるカリキュラム編成とした。 さらに当専攻では開設以来、現役の有職社会人に対し広く法曹への門戸を開くという理 念を具体化するため、長期履修制度を設けている。これは