成体マウス脑内への神经干细胞の移植について.pdfVIP

技術ノート 成体マウス脳内への神経幹細胞の移植について 1 2 2 2 村松　大 ，能智禄弥 ，佐藤祐樹 ，久恒辰博 Transplantation of neural stem cells into adult mouse brain 1 2 2 2 Dai MURAMATSU , Rokuya NOCHI , Yuki SATO , Tatsuhiro HISATSUNE 緒言 造，判断 といった高次機能 を司る大脳皮質では， 「成体哺乳類の中枢神経 は一度損傷すれば，二 通常，ニューロンの再生は見 られないが，脳虚血 度 と再生 させる事は出来ない． この絶対真理 を変 後に神経前駆細胞か ら，新たなニューロンが生み えることが可能である とす るな ら，それは将来 出されるとい う報告がなされている 7,8） ． しか し， の科学である．」 これは 19 世紀 の偉大 なる神経 この様な内在性神経幹細胞や神経前駆細胞 による 解剖学者 Santiago Ramon y Cajal の言葉である ニューロンの再生は神経変性疾患に見 られる大規 1） 模 なニューロンの脱落を補 うレベルでは無 く，そ ．近年の脳科学研究はこれに応 えるかの如 く進 展 目覚 しく，中枢神経系の再生に関する報告 も数 の為，神経変性疾患に対 しては移植 による外部か 多 く見 られる様 になってきた．例 えば， ヒ トを含 らのニューロンの補填が現実的な治療方法である めた霊長類では，記憶 を司る海馬 という領域 に神 と考えられている． 経幹細胞が存在 し，新たにニューロンを生み出す これまで細胞移植 に関 しては， ドナー不足や免 事が明 らかになっている 2） 疫拒絶，脳死患者や中絶胎児か らの臓器移植 に伴 ．海馬に存在する神経 幹細胞 は，その数が一生 を通 して保たれてお り， う倫理的問題など，様々な問題 を抱 えていた． し 学習行動による刺激 を受ける事で新たなニューロ か し近年，人工多能性幹細胞 （iPS 細胞）の登場 ンを生み出す と考 えられている 3,4） や骨髄における間葉系幹細胞の研究か ら， これ ら ．囓歯類では， 海馬の他 に側脳室下帯 とい う領域 に神経幹細胞 の問題に対する解決の糸口が見出されたことによ が存在 し，新たなニューロンを生み出 している． り，移植研 究 はかつてない盛 り上が りを見せ て 生 み 出 され た ニ ュー ロ ンは Rostral Migratory いる 9） ．既 に， ラッ トパーキンソン病モデルやマ Stream （RMS） とい う経路 を介 して，嗅覚 を司 ウス脊椎損傷モデルにおいて，病変部位への iPS る嗅球に移動する5） 細胞の移植 により，有意な治療効果が示 されてい ．これ らの新生ニューロンは， 脳梗塞 など虚血症状 をきた した脳 内においては， る 10,11）