真正粘菌-群马県立高崎女子高等学校.PDFVIP

真正粘菌 ～その知られざる生態を暴く～ Ⅰ 概要 粘菌を温度、光の有無などの条件を変えて培養すると、成育に違いが生じることが わかった。 Ⅱ 研究目的 真正粘菌の一種であるモジホコリカビを シャーレで培養することで成育過程を観察し、 成育に関して最適条件を探る。また、真正粘 菌の性質を応用させた実験を行うことでエサ とエサとの最短距離を結ぶという性質を検証 する。 図１ シャーレで培養した真正粘菌 Ⅲ 方法・手順 ＜準備＞ （１）実験に必要な寒天培地をつくる ・精製水500ml に寒天を 10g 加えよく混ぜる。 ・寒天の溶解及び培地の滅菌のために121℃、20 分オートクレーブする。 ・クリーンベンチ内でシャーレに寒天を流し込み、静置し固める。 （２）マスタープレートをつくる ・作成した寒天培地に、ろ紙に付着している菌核をピンセットで置く。 ・ピンセットを用いて菌核の周りに数個のオートミールを置き、ふたを閉める。 ・黄色の変形体が広がったら、適宜オートミールを追加し粘菌を培養培地上に広げる。 - 1 - ＜実験 1 最適条件を探る実験＞ １つのマスタープレートから5 つの異なる条件で実験を行い、どの条件下が一番成育に 適しているかを調べる。実験条件は図 2 の通りである。 ① ② 条件① 20℃,暗所,エサあり 条件② 20℃,明所,エサあり ③ 条件③ 35℃,暗所,エサあり 条件④ 3℃,暗所,エサあり ④ ⑤ (冷蔵庫) 条件⑤ 20℃,暗所,エサなし 図 2 真正粘菌を培養している様子 (注)・温度を一定に保つため恒温機を使用した。(温度 20℃、35℃) ・光を遮るために『暗所』の条件のものにはアルミ箔で覆いをした。 ・えさとなるオートミールはすべて 0.35g とした。 ・『3℃』条件のものは、冷蔵庫で保存した。また、これも『暗所』条件のため、冷蔵 庫内であるがアルミ箔で覆いをした。 ＜実験 2 迷路実験＞ 脳を持たない粘菌が本能的にえさまでの最短距離を見つける過程を観察する。 《実験方法》 ⑴ パラフィルムで寒天上に迷路を作成する。 ⑵ その上にマスタープレートから採取した粘菌の一部をおく。 ⑶ ［実験 1］の③の条件下で培養を続け、成長した変形体の一部を採取する。 ⑷ パラフィルムで作った迷路の上にエサを配置し、そこに採取した変形体をのせ、伸 び方を観察する。 ＜実験 3 原形質流動の観察＞ 培養した粘菌の変形体を光学顕微鏡で観察し、粘菌の体内で原形質流動が行われてい ることを確認する。 - 2 - Ⅳ 結果 ＜実験 1 最適条件を探る実験＞ ⑴条件①、②では牛乳をこぼしたような白い変形体になり、条件③では黄色の変形体と なった。 ⑵条件④では全く成長せず、条件⑤では図 4 のようにオレンジ色の微小の塊が観察され た。 ⑶白色の変形体が見られた数日後、黄色に色が変形し一