現代韓国経済分析序論-立命館大学経済学部論文検索.PDFVIP

１ 現代韓国経済分析序論 岩　田　勝　雄 も　く　じ はじめに 韓国経済発展の過程 現代韓国経済の諸特徴 おわりに １　はじめに 　１９５０年代の西ドイツ ，６０年代の日本，そして７０年代の韓国は奇蹟の経済成長 を達成した国とされている。西ドイツ，目本は敗戦国として生産力水準の絶対 的低下の中から，アメリカの技術，資本などに依存しながら復輿が行われた。 西トイソは西 ヨーロッパ市場およぴ国内市場の拡大によって， 目本は国内市場 の拡大とアメリカ，東南アソア市場への進出が経済成長を達成しうる基盤とな った。韓国は，満州，台湾，サハリソなどと同様に目本の旧植民地として第２ 次世界大戦後「独立」した国であり ，生産力基盤が西トイソ，目本に比して脆 弱た中での生産力発展 ・奇蹟の成長を遂げてきた国である。 　韓国は，現代世界経済の中にあってはフラシノレ，メキンコ， 台湾，ノソカポ ーノレ などとともにＮＩＣｓ と呼ばれる新興工業国であり，第２次世界大戦後次 々に独立してきた多くの発展途上国とは異なった発展段階を辿っている国であ る。 また韓国はＮＩＣｓの中でも特異な状況を示している。それは朝鮮民主主 義人民共和国と３８度線で同　民族が分断されての「国家」形態あるいは国民経 済彩成とな っている点である。現代世界とくに資本主義世界体制と杜会主義世 界体制の対立の中で韓国は，対杜会主義国の最前線にある国家としてアメリカ およぴ目本の反共の砦としての役割を担うべき位置にある。形式的な独立国家 　　　　　　　　　　　　　　　　　（１２７） 　２　　　　　　　　　　　　立命館経済学（第３２巻 ・第２号） 形態をとりながら，資本主義世界体制の中でアメリカおよぴ目本の共同支配体 制に組み込まれるべき位置つげとな っている。韓剛こおげるアメリヵ ・目本の 従属 ・依存体制の維持のためには，多くのＮＩＣｓ 諸国と同様に反共国家，軍 事独裁政権の補完が必要とな っている。１９６０年代の初めに朴政権が誕生して以 来， 今目の全斗燥政権まで事実上軍事独裁政権が，政治的 ・軍事的にはアメリ カの支配下にあり，経済的には目本に依存した状況の下で継続してきているの である。 　韓国におげる奇蹟の経済成長を達成した原因は何か，現状の問題点，課題は 何かを明らかにすることは，世界史的に重要である。とくに先進資本主義副こ とっ ては「南北間題」として取り上げられているように発展途上国の要求 ・運 動にどのように対処するかという問題に関して，韓国は一つのモデノレ を提供し ているからである。また発展途上国側からの「南北問題」は自立的国民経済移 成を目指して帝国主義，新植民地主義にどう対処するかであるが，韓国は発展 途上国の自立的国民経済形成という目標を掲げたがら，先進資本主義国に従属 しての生産力発展という一つの型を提起しているからである。さらに発展途上 国型経済発展を目指したアルゼソチソは現在は工業化の達成どころかイソフレ ーンヨソの激化，大量の失業者の存在，政情不安という状況でＮＩＣｓ諸国に比 して生産力は著しく小さくなっている。韓国はこのアノレゼソチンの例のように 将来的には再び生産水準の遅れた国にたる可能性があるかどうか，あるいは別 の道を歩むのかどうかは，ＮＩＣ ｓ諸国の動向とともに，現代世界経済の重要な 課題とな っているのである。 　１９７４～５年世界恐慌以来，世界不況は長期化し今日まで続いている。ＮＩＣｓ 諾国も世界不況に当然のことたがら巻き込まれている。世界市場は資本主義的 生産力が増大すれは増大するほど，外国貿易 ・国際的分業関係が密になり，各 国民経済も世界市場の運動に観定される。ＮＩＣｓ 諸国も生産力拡大とともに世 界市場の運動に観定される側面が大きくなる。先進資本主義国の場合は，各 国民経済の運動が世界市場 ・国際的分業関係の運動を規定していく側面があ る。 すなわち国民経済と世界市場は相互揚定