032-04115印特)第3章-商品開発部門.PDFVIP

特集　機械屋のためのリチウムイオン電池活用入門 リチウムイオン電池を安全に使う―その1 充放電評価と内部抵抗評価 　リチウムイオン電池は優れた特徴をもっている として初めて採用した。リチウムイオン電池の発 が，使用法を誤ると異常発熱，破裂，発煙，発火 火事故は2件立て続けに起きた。2013年1月7日， などを起こす危険性を持った電池であり，取扱い フライトを終えて駐機中だったJAL008便で機体 には注意が必要である。本章ではリチウムイオン 内部のリチウムイオン電池から発火。2013年1月 電池を安全に使う方法について解説する。はじめ 16日，飛行中のANA692便で機体内部のリチウム に，リチウムイオン電池の危険性と組電池を安全 イオン電池が発煙し，緊急着陸。ANA692便の事 に使うためのいくつかのポイントを説明する。次 故を受けて世界各国で運行中の787がすべて一時 に，リチウムイオン電池の電気的特性と正しい充 運行停止となった。リチウムイオン電池はノート 放電の方法，専用の充放電システムを使用した充 パソコンやスマートフォンを中心に多く使用され 放電評価や電池性能に影響を与える内部抵抗につ ており，これらでも発煙，発火する事故が過去に いて説明する。これらは電池を安全に使うための 起きている。リチウムイオン電池の発煙や発火の 基本的な電池の使用法になりうる。 様子は第4章の釘刺し試験で紹介しているので参 考にしてほしい。 1.　リチウムイオン電池の事故 　787の事故以降，リチウムイオン電池の安全対 　リチウムイオン電池に関する大きな事故として 策が見直され，現在のリチウムイオン電池には二 話題となった例にボーイング787のバッテリー発 重，三重に安全回路が組み込まれている。しかし， 火事故がある。ボーイング787は燃費の良い中型 可燃性の材料を使用しているため，取扱いを誤れ 航空機としてボーイング社が開発・製造する旅客 ば発煙や発火の事故は起きる。そのため，正しい 機で，補助動力ユニットの始動と非常時のバック 取扱い方法を理解しておく必要がある。 アップ用としてリチウムイオン電池を民間航空機 　最近では可燃性の材料を使用しない燃えないリ チウムイオン電池としてリフェ電池（LiFe）が注 目されており，自動車や産業用機械，非常用の給 電システムの電池として需要が進んでいる。 2.　リチウムイオン電池を安全に使う には 　2014年の二次電池の総生産量を図1に示す。リ チウムイオン電池の生産量は全体の6割以上を占 めており，二次電池の中で最も多い。安全性が確 保されていなければ，これだけ普及することはな 図1　二次電池の総生産量2014年（経済産業省機械統 い。リチウムイオン電池は，以下の点を守ること 計より） で，事故を防ぐことができる。これらを守らない 32