佐藤弘美，晴佐久妙堀.PDFVIP

仙台市立病院医誌　22，163－168，2002 　索引用語 乳幼児虐待 　母性意識 コメディカル・レポート 　周産期 乳幼児虐待の早期発見に向けて 愛着形成が及ぼす新生児の体重増加への影響 佐藤弘美，晴佐久妙㌔堀 江　雅　子＊＊ 　　　　　　　　　斎　藤　　　晃＊＊＊ 児の体重増加，育児に対しての感情，幼児・児童 はじめに 虐待に対する意見，花沢式対児感情評定尺度（表 　近年，乳幼児虐待の報告が後をたたず，虐待件 3）など46項目につき2回目のアンケート調査を した。 数も平成9年度の5，352件から平成11年度は11， 631件と2倍以上に増加している。また，全国の被 結 果 虐待児における0歳から3歳未満の占める割合は 20．6％であり，学齢前幼児を含めると約半数にの 　産後，育児にあたりどんな感情を持つかの質問 ぼると報告されている。これら発生時期を考え，周 において「楽しい」と答えたプラス群と，「辛い」 産期に関わる我々が早期に関与因子を見つけ，対 と答えたマイナス群を比較すると，プラス群の 処することが必要である。 1ヶ月健診における1日体重増加量が有意に多 　坂井聖二は，虐待発見のサイン（表1）を挙げて かった（p＜O．05）（図1）。 いる1）が，子どもに表れるサインとして，体重増加 　また，初めて児と対面した時の感情（以下，対 が不良であることを指摘している。研究を進めて 面感情）を対児感情評定尺度によりプラス・イメー いく中で，1ヶ月健診時の体重増加が，愛着形成に ジ群とマイナスイメージ群に分類し，1ヶ月健診に 関連を示したので，ここに報告する。 おける体重増加量を比較した。その結果，プラス イメージ群で体重増加量が有意に高値を示した 研究対象及び方法 （p＜0．05）（図2）。 　更に花沢氏の母性理念質問紙により，産前と産 　2000年12月14日～2001年6月30日に当院で 後1ヶ月の母性意識を比較した（花沢は，母性意識 分娩した100例（初産婦50名　経産婦50名）に を，女性が母親になる，あるいは母親であること っき34～35週時と1ヶ月健診時の2回チェック 式（一部記述式）アンケートを手渡し外来回収ボッ の自覚とその自覚に基づく妊娠・分娩・育児への クスにて回収し，比較検討した。回収率44．4％，平 態度や価値観との両者を包括する概念というよう 均年齢は30．6歳だった。 に定義づけている）。母性意識の上昇率プラス群は 　34～35週の妊婦に花沢氏の母性理念質問紙2）体重増加量が有意に高値を示した（p〈O．05）（図 （表2）と，分娩・育児の相談相手，夫の家事協力 3）。 及び不満，計画的な妊娠だったか，