渡辺正孝浜名光麻.PDFVIP

244　　　　　　　　　　　　　　　東北農業研究　第8　号 果　樹　経　営　設　計　の　一　試　論 渡　辺　正　孝・浜　名　光　麻 （福島県鼻試） 設計としては不合理性を有している。そのため後者の考 1目的と方法 えに立ち育成期と用役期を通して計算された場合の経済 商業的農業の伸展は，農業経営を専門的商品生産経営 性を究明しなければならない。 に発展対応させ，他方，農業構造改善事業は選択的拡大 かかる方法は長期基本設計への利用や，生育期間のこ と云う名のもとに，主産地形成を目的として推進してい となる作目間の有利性の判定資料として利用し得るもの る。 と考える。 これらを背景に果樹は今後有望な作物としてクローズ 2　目標設計試算上の条件 アップしてきた。 果樹の主産地形成は，旧産地を中心とし，新産地の育 永年作物を対象とする目標設計には，永年作物自体の 成発展をめざして作目転換や新しい農地造成事業などに 性格から，少なくとも次のような条件の究明をなし試算 ともなって集団新穂と云う形をとり伸展している。 上の約束をなすことが必要である。 果樹の育成発展には技術的問題はかりでなく，資本力 ①育成期間と育成費の算出方法。 の強弱が重要な問題の1つと考えられる。すなわち，永 ②用役期間の算出。 年作物としての果樹は年々多額の資本投下を必要とし， ⑨樹令別収量の算出。 しかも，その回収に長期間を要する性格を有しているか ④長期間にわたり生産が持続されるための価格決患， らである。これは単年作物とは異なり，その改廃を自由 以上の4条件について．これから試算しようとする約 にすることを不可能とし，生産のために長期にわたる綿 束を次のように設定した。 密な設計々画を必要としている。 ①についてに種々の方法が考えられるが，育成費につ 果樹経営の収益は，このような長期的視野でみなけれ いては，農林省統計調査部「永年性植物育成価調査」（ ばならないし，さらに，果樹自体の性格から育成期の果 樹と用役期の果樹に分離し，その構成比率によって収益 t＝1 構造を究明する必要があろう。そして経営設計立案にあ によって算出するものとし，育成期問は年間総費用が副 たっては基本的には所得の最大と，平均に安定した所得 産物価額を上回ある時点とする。 が得られるように考慮しなければならない。 ②についても「農林畜産業用固定資産評価基準」にし そこで果樹作経営の目標設計を立てるにあたってほ次 たがった。 のような2つの考え方がある。 ③樹今別収量は．自然条件および栽培技術の差によっ ①単に経営の目標設計を所得最大におくならは，全て て著しく異なり実際には収量が曲線として得られるが， の果樹が最盛園になった時を想定すれば容易に目標設計 りんご・ももについて収量曲線をえがく資料に欠けてい をくむことは可能である。 るため，用役期間の収量は平均的収竜を設竃し，用役期 ②しかし，逐次改植をなしながら所得が年々平均した