渡辺晋一.PDFVIP

はじめに 　皮膚真菌症は皮膚科の新患患者の約14％を占める頻度の高い疾患である。 そして大部分の表在性真菌感染症は、その臨床症状からある程度診断は可 能であるが、しばしば湿疹・皮膚炎と誤診され、悪化するものも少なくな い。実際、深在性白癬の100％近くは誤診によるものである。しかもこの ような患者を正確に診断しさえすれば、その治療は比較的容易で、数ヶ月 にわたって悪化した皮膚疾患が、あっと言う間に治ってしまう。表在性皮 膚真菌症は命にかかわることは少ないため、誤診したからといって医療訴訟 とならないかもしれないが、患者の信頼を確実に失う。そこで、いかに正 確な診断を下すかが、皮膚真菌症治療の鍵を握る。 　幸い外来で診療する皮膚真菌症の99％以上は白癬、カンジダ症、癜風の 表在性真菌症で（図1）、真菌は角層もしくは毛や爪に存在する。そのため、 直接鏡検により、培養結果を待たずして、診断を確定することができる。 そこでどの部位から採取すると菌が見つかりやすいのか、また菌要素とそ うでないものを的確に判断できることが、皮膚科専門医になるための必須 条件となる。いずれにせよ真菌要素を確認しないまま、抗真菌薬を投与す べきでない。 （8,749 例） （8,396 例） 図 1 我が国の皮膚真菌症の割合 （日本医真菌学会、2006年） 清佳浩：JPN J Med Mycol, 53：185-192, 2012 より作図 1 真菌とは