疾患名起立性调节障害.PDFVIP

アンケート2 疾患名：起立性調節障害 1. 日本における有病率、成人期以降の患者数（推計） 小児では軽症例を含めると中高学生の約１０％といわれている。各学年に約 12 万人 （中高生合計で約７０万人）と推定される。軽症例では日常生活に支障はないが、欠 席を繰り返し不登校状態に陥る重症例は約１％であり、全国で７万人と推定される。 1999 年旧厚生省科研費調査では小児科を受診した 10~15 歳の子どもの８％が起立性 調節障害であった。 過去の調査では、成人期以後にも症状が続く患者は約40% と報告されている。 2. 小児期の主な臨床症状・治療と生活上の障害 立ちくらみやふらつき、失神または失神前症状、脳血流低下に伴う頭痛、思考力低下。 午前中に症状増悪するため朝起床困難、および登校困難により、遅刻欠席を繰り返す。 不登校の約３～４割が本疾患と推定されている。学業困難のため高校受験に際して大 きな支障となり、ガイドラインに定める中等症以上では全日制高校への進学は困難で ある。 3. 成人期の主な臨床症状・治療と生活上の障害 症状は徐々に改善するが、起立性低血圧によって日常生活に支障をきたすことが多い。 重症例で生涯にわたって完治せず、症状が持続し日常生活に支障をきたす。したがっ て就労等の社会復帰に支障をきたすことが最大の問題となる。すなわち、フルタイム での就労は困難なケースが多い。とくに立ち仕事、肉体労働は困難で、座位での事務 系職種に就労することが多い。パートタイムでは、1 日数時間以内、週半分程度の就 労が多い。そのため、ひきこもり、うつ病、ストレス関連疾患を合併する。とくに、 うつ病は約1 割で発症する。 また食事性低血圧を発症しやすく、朝、昼食後に低血圧を生ずることから失神による 転倒などの危険性がある。 また思春期以後の女子には生理不順、PMS を発症し、婦人科治療を要することも少な くない。 4. 経過と予後 114 生命予後は良好であるが、ひきこもり、精神疾患の合併が問題であり、特にうつ病は 約1 割で発症する。 5. 成人期の診療にかかわる（べき）診療科 小児科、神経内科、心療内科、婦人科、精神科 6. 成人期に達した患者の診療の理想 b. 小児科と成人診療科（診療科名：小児科、神経内科、心療内科、婦人科、精神科） の併診 コメント 成人期にまで持ち越す起立性調節障害の患者では、最も治療を要する症状や病態がケ ースによって非常に異なる。起立性低血圧が持続するケースでは神経内科での治療が 必要であり、抑うつ状態が目立つケースでは精神科との併診が必要であり、あるいは PMS が強い場合では婦人科との併診も必要である。したがって症例ごとに併診する科 を考える必要があり、単科に移行することは望ましくない。 7. 成人期に達した患者の診療の現実 b. 小児科と成人診療科（診療科名：神経内科、心療内科、婦人科、精神科）の併診 8. 理想(6) と現実(7)の乖離の理由 a. 成人診療科側の受入れの不備・不十分 b. 小児科側が患者を手放さない・手放せない c. 患者（・家族）が自立しない 9. 成人期に達しても移行が進まない場合の問題 成人診療科にまだ十分な理解が進んでいない現実はあるが、受け入れ成人診療科がな いにもかかわらず、小児科医が「15 歳になったので内科に行ってくれ」と無理やり手 放すケースが少なくない。むしろ、それが現時点では問題だ。 10. 解決のためにすべき努力 a. 成人診療科の医療者を対象に疾患についての教育・啓発 （診療科名、学会名：神経内科学会、心療内科学会、婦人科学会、精神神経学会） d. 当該疾患に関する小児科と成人診療科の混成チームの結成 115 f. 患者団体の強化 11. 本疾患の移行に関するガイドブック等について d. 編纂の予定はない