生殖内分泌委員会.PDFVIP

2015年6月 1493 報　　　告 生殖・内分泌委員会 委員長　　杉　野　　法　広 副委員長　　久　具　　宏　司 委　　員　　北脇　　城，楢原　久司，峯岸　　敬，村上　　節 平成26年度の生殖・内分泌委員会では， 1）帝王切開瘢痕症候群による続発性不妊症に対する治療法の検討小委員会 2）子宮内膜症・子宮筋腫・子宮腺筋症の実態に関する検討小委員会 3）生殖医療リスクマネージメント小委員会 4）周産期委員会との合同小委員会 5）MRガイド下集束超音波治療器の検討小委員会 6）本邦におけるEP合剤による血栓症の頻度の調査および血栓症リスクに対する安全策についての小検討 委員会 において，各小委員会がそれぞれに立案した計画に従って活動を展開し，以下に示す報告がなされた． 1．帝王切開瘢痕症候群による続発性不妊症に対する 設，生殖補助医療登録施設419施設，計1,085施設（重 治療法の検討小委員会 複を含む）を対象にアンケート調査を実施した．認知度 小委員長：村上　節 や経験率を問うた1次調査結果は前回報告（日産婦誌 委　員：工藤正尊，生水真紀夫，谷村　悟， 66巻6号）した通りで8割以上にCSSが認知されてい 楢原久司 ることが判明した．そこで，CSSによる続発性不妊症 研究協力者：辻俊一郎 に対する治療経験を有する176施設に個別調査票を送 はじめに 付し2次調査を行った． 　帝王切開術後の子宮創部に陥凹性瘢痕を認めること 結果 は稀でないが，その陥凹部に月経血が貯留することで， 　176施設に2次調査票を送付し，56施設（32%）から 不正性器出血および過長月経を呈し，精子侵入障害や 回答を得た189症例を解析対象とした． 胚の着床障害を引き起こし，続発性の不妊症となる場 　症状については，過長月経（38%），卵胞期不正出血 合がある．また，これら陥凹部への液体貯留が誘引と （48%），排卵期不正出血（42%），黄体期不正出血（12%）， なり，月経困難症や慢性の骨盤痛を呈することも知ら 月経痛（30%），月経時以外の疼痛（11%），性交痛（2%）， れるようになってきた．しかし，この帝王切開瘢痕症 その他（4%）であった（図1）． 候群（CesareanScarSyndrome：CSS）とも称される疾 　診察所見としては，子宮前屈（55%），子宮後屈 患概念は日本産科婦人科学会が編集する，「産科婦人科 （31%），子宮奇形（5%），卵胞期の帝王切開部の液体貯 用語集・用語解説集」にも収載されておらず，本邦にお 留（70%），排卵期の帝王切開部の液体貯留（75%），黄 ける報告も限られた症例報告が散見されるのみである． 体期の陥凹部液体貯留（29%），卵胞期の子宮腔内液体 　そこで，日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会で 貯留（44%），排卵期の子宮内腔液体貯留（44%），黄体 は，本邦における帝王切開瘢痕症候群および続発性の 期の液体貯留（9%）を認めた（図2）． 不妊症の実態を把握すべく，「帝王切開瘢痕症候群によ 　診断に関しては，診断数は経年的に増加しており（図 る続発性不妊症に対する治療法の検討小委員会」を立 3），診断方法としては図4に示す通り，経腟超音波検 ち上げ，