大腸がん診断を変革するCTCの進歩と普及.pdfVIP

Ⅶ Discussion CT Colonography時代の幕開け 大腸がん診断を変革する CTCの進歩と普及 近年，日本人の大腸がん患者が急増する中，多列 司会 CTを用いて低侵襲かつ短時間での検査が可能な大 今井　裕　 東海大学医学部医学科基盤診療学系画像診断学教授 腸 CT 三次元診断検査（大腸仮想内視鏡，CT Colonography：CTC）が注目を集めている。注腸 出席 （五十音順） X線検査や内視鏡検査に抵抗感があることや，内視 鏡医のマンパワー不足も問題となっていることから 飯沼　元　国立がんセンター中央病院放射線診断部医長 CTCへの期待も高く，新しい前処置法やコンピュー 松木　充　大阪医科大学附属病院放射線科 タ支援診断（CAD）などの登場によって，より精度 光島　徹　医療法人鉄蕉会亀田メディカルセンター幕張統括院長 の高い検査が可能になると考えられている。 一方，CTCを行うためには，さまざまな技術と経験 山野泰穂　秋田赤十字病院消化器病センター第2消化器科部長 が必要とされるほか，診断能の検証などの課題も残 されている。そこで，日本におけるCTCの臨床研究 を牽引してきた放射線科医と，内視鏡検査のエキス パートである消化器科医の先生方にお集まりいただき， る状況ではありませんでした。その後，MSCTが16列から 国内外におけるCTCの現状と課題，また，今後の 64列となり，WSの機能もどんどん向上して，日常臨床にお 展望について語り合っていただいた。 いても大腸がんの術前診断で，CTCが十分に有効性を発揮 するようになりました。 　64列MSCTでは，CTCの検査時間は10分程度ですみ，大 CTCによる大腸がん検査の現状 腸内視鏡検査直後の非常に良い前処置の状態で行うことで， ─黎明期から現在までの進歩と課題 注腸造影類似画像をはじめとする3D画像を作成できます。 その後，仮想内視鏡（Virtual Endoscopy：VE）像で病変を 　司会（今井）：CTCは，1994年に米国で初めて報告され， 詳細に検討し，断層像やMPR像と組み合わせて確認するこ その後，欧米で広く普及しましたが，日本ではさまざまな理 とで，腫瘍の詳細な診断ができるようになりました。その結果， 由で臨床応用が遅れているのが現状です。しかし今後， CTCが普及していくことは間違いなく，2010年がター ニングポイントになるかもしれません。そこで本日は， CTCの有用性について，注腸X線検査および大腸内 視鏡検査と比較しつつ，お話し合いいただきたいと思 います。 　まずは，先生方の施設におけるCTCの現状について お聞かせください。 　飯沼 ：国立がんセンターでは，2001年に4列MSCT を導入すると同時に，術前の検査法の 1 つとして， CTCについての検討を始めました。4列MSCTは，シ ングルスライスCTよりもスキャンパフォーマンスが大 幅に向上し，得られたデータから再構成した3D画像も， 臨床応用可能なレベルに達しつつありましたが，当時 のワークステーション（WS）では，3D画像作成には 1症例につき30分もかかったため，日常臨床で使用でき ( )