第7章灾害事例.doc

７－１－３：水素脆化、水素アタック 水素ぜい化は、鋼中に吸収された原子状水素を原因として生じ、主に常温付近での伸び、絞りの延性低下現象をいう。水素ぜい化は吸収された水素が鋼との化学反応を行わないのが特長で、おくれ破壊、水素誘起割れ、硫化物応力腐食割れも水素吸収に起因し、化学反応は起こさない。（１４９℃以下で問題となる） 一方水素アタックは、水素侵食又は水素腐食ともいわれ、脱硫装置等高温高圧水素環境に機器、配管類がばく露される条件で生じるぜい化であり、大きな事故に発展する可能性が高く、重要なぜい化現象の一つである。 一般に、高温高圧水素環境での使用材料は高温強度、耐水素性が要求され、それらに優れる2(1/4)Cr－１Mo鋼を中心としたCr－Mo鋼が使用される。容器類では内部流体による腐食を考慮し、ステンレスクラッド鋼が採用される。 （水素アタック） （鋼材中の固溶炭素炭化物）（流体水素）　　　　　　　（メタンの生成） Ｃ　　　　　＋　　Ｈ２　　　　　　　　　　ＣＨ４ （Ｆe３Ｃ）　　　　　（４Ｈ）　　　　　　　　（ＣＨ４）＋３Ｆe） ※　水素はＨ２というガス状のままではその分子の大きさが鋼の結晶格子に較べてはるかに大きいので、鋼の内部に侵入拡散はできないが一度Ｈという原子状水素に解離すれば、その原子半径0.46?は鋼の結晶格子2.5～3.3?に比較し極めて小さいので、鋼中に容易に移動?拡散し得るようになる。 生成されたメタンが粒界や非金属介在物周辺に集積し、強度靭性を著るしく低下させる。 〔事　例〕重油直脱装置の爆発火災 重油直接脱硫装置の原料油張込みポンプの安全弁下流装置（６Ｂ）が、水素侵食により劣化し、噴出した水素を主成分とするガスに着火、爆発?火災となった。 ６Ｂ配管の洩れの発見者が計器室へ連絡し、班長以下８名が現場処理にあたろうとしていたところ、別の１０Ｂ配管がみるみるうちにふくらんできて、退避を命ずると同時に爆発火災が発生し、死者５名、重傷者３名、物的被害３０億（推定）の大事故となった。 事故後、原因調査が進められ、６Ｂ配管部の内部流体は、水素約８０mol％、温度３３０℃、圧力１４０kg／?であり、配管材質はＳＴＰＴ－３８であり、長期にわたり水素侵食をうけ、ついにき裂を生じ、内容物が噴出、爆発したと結論された。（19○○年　△△） 7－2 高温 高圧