芥川龙之介とWモリス大正期モリス受容を媒介とした美学-立教大学.docVIP

※ホームページ等で公表します。（様式１） 立教ＳＦＲ－院生－報告 立教大学学術推進特別重点資金（立教ＳＦＲ） 大学院生研究 ２００４年度研究成果報告書 研 究 科 名 立教大学大学院 文学研究科 日本文学専攻 指導教員 所属?職名 氏　名 　　　文学部教授 　　　　　　石崎　等 印 自然?人文の別 自然　?　人文　 個人?共同の別 個人　?　共同　　　名 研究課題 芥川龍之介とＷ?モリス──大正期モリス受容を媒介とした〈美学イデオロギー〉分析 研 究 代 表 者 在籍研究科?専攻?学年 氏　名 文学研究科日本文学専攻 博士後期課程４年 　　　　　　藤井　貴志 印 研　究　組　織 在籍研究科?専攻?学年 氏　名 研究期間 　　２００４ 年度 研究経費 　　　　　　２００ 千円 研究の概要（200～300字で記入、図?グラフ等は使用しないこと。） 　芥川龍之介が東京帝大英文科を卒業したのは大正５年のことであるが、その際提出した卒業論文は「ウィリアム?モリス研究」であった。関東大震災の際に焼失したこの卒業論文の全貌を現在知ることはできない。そのため厖大な数にのぼる芥川研究の蓄積の中にあって、これまでＷ?モリスの導入は不十分なものに留まらざるを得なかった。だが、芥川は当時友人に宛てた書簡においてしばしばこの卒業論文に言及しており、またその死の直前、『社会思想家としてのラスキンとモリス』（昭２）の著者大熊信行に宛てた書簡が存在する。その卒業論文自体が現存しない“空虚な中心”であるにしても、それ以外の様々な言説をクロスオーバーさせることで、芥川がモリスの何を読み、また何を読むことができなかったのか、そこに現象する〈美学イデオロギー〉とは何か、の分析が可能となる。 キーワード（研究内容をよく表しているものを３項目以内で記入。） 〔　　美学批判　　　　　　　　　　　　 〕 〔　アナーキズム 〕 〔　　芥川龍之介 〕 ※ホームページ等で公表します。（様式２－１） 立教ＳＦＲ－院生－報告 研究成果の概要（図?グラフ等は使用しないこと。） 　 　一貫した研究テーマが「大正期を中心とした文学と社会科学的言説との交錯」である為、カバーする領域が極めて広い。本研究ではＷ?モリスに焦点化したわけであるが、周知のようにモリスその人が建築家?装飾芸術家?画家?詩人?小説家?社会運動家等々、多様な肩書きと可能性を同時に併せ持つ人物であるので、大正期におけるモリス受容を調査する段階で、その分岐した問題系の整理が必要であった。以下、研究成果のひとつとして大正期モリス受容の概略を示したい。 イギリスにおいてモリスが死去したのは1896（明治29）年のことであるが、日本における紹介はそれ以前に遡る。明治25年11月の『早稲田文学』には「未来の英国勅撰詩人は誰そ」と題された記事が見受けられ、同年11月3日の『國民の友』にも「詩人の題目」という記事を発見することができる。死後の明治30年1月9日?16日の『國民の友』に掲載された「詩人ウイリヤム、モリス」までを含めるならば、この時期のモリス受容は特に〈詩人〉としての側面にシフトしたものであったと言うことができる。 村井知至『社会主義』が刊行された明治32年頃から、モリス受容に変化の兆しが現れる。村井は同書の第六章「社会主義と美術」においてモリスに触れ、詩人であることに留まらず、アーツ?アンド?クラフツ運動を提唱しながら積極的な社会主義者に転じていったモリスを前景化している。明治36年2月6日の『平民新聞』に「社会主義の詩人ウヰリアム?モリス」が掲載され、翌年、モリスの『ユートピアだより』が堺利彦により『理想郷』の邦題で刊行（平民社）されたことに明らかなように、明治43年の大逆事件によって社会主義運動全体が冬の時代を迎えるまで、モリス受容は〈社会主義者〉としての側面にシフトしていたといってよい。 大逆事件以降、明治45年2?3月の富本憲吉「ウイリアム?モリスの話」（『美術新報』）によってモリスの工芸デザイナーとしての側面が初めて本格的に紹介される等の展開があったものの、大正期に突入すると、大正3年1月の堺利彦「ヰリアム?モリス」（『生活と芸術』）を最後に、大正9年に至るまでモリスに関する言説はほとんど姿を消す。この時期、モリスをめぐる関心は本間久雄を媒介として「民衆芸術論争」に接ぎ木されたといってよいだろう。本間の「民衆芸術の意義及び価値」（『早稲田文学』）によって大正5年8月に開始されたこの論争は、大杉栄などアナキスト陣営を巻き込みながら、大正8年頃まで続いていく。論争の火蓋を切った本間の中心的、表向きの参照枠はエレン?ケイ、ロマン?