トリアージに替わる大量伤病者対応方法doc .docVIP

トリアージに替わる大量傷病者対応方法 尾立貴志（2012.07.21） 「トリアージはジュネーヴ条約違反である（電子版）.doc」は、トリアージが非人道的行為であり、民主主義的な社会思想を基盤から崩していくことを警告しています。原稿はトリアージ批判に重点を置いているので、トリアージをしないでどのように大量傷病者に対応すべきかについては少ししか述べていません。 実際に大災害に直面したとき、民間の病院等はトリアージをしないで、どのような方法で大量の傷病者に対応すればよいのでしょうか。ここでは急性期のエッセンスのみを紹介しておきます。これらのエッセンスは机上の空論ではありません。日本軍が戦場において、また原爆を受けた長崎で大量の傷者をどのように処遇してきたのかを調べることによって知り得た教訓です。災害においても、それをうまく乗り越えた病院では、だいたい似たようなことをしているはずです。 １．混乱を防ぐ まず念頭に置くべきことは、病院職員や患者の混乱を防ぐということです。「救命の効率」などは決して考えないでください。大災害による最初の破壊に堪えて生き残った人々が、被害者の救済や復興に向けて協力し合えるような社会的秩序を保ち続けることが最も重要なことです。「トリアージすれば何人多く救命できるのに」といったことに気を使わないでください。そういうことを考え始めると「この人を救うのは損だ」という考えも必ず起こってきます。そして医療者が患者を差別的に見るようになっていきます。 一番大切なことは混乱しないこと、させないことです。秩序を保つことができたときに初めて、人々は協力し合うことができるようになり、その時その場にある人的また物的資源を最大限に活用した被災者の救済が可能になります。その可能性以上のものを追求すべきではありません。トリアージは、その場の秩序を破壊します。みんな優先順位を気にするようになり、自己犠牲を受け容れながら協力し合うような関係はすぐに失われ、順位を巡って争いが起こるでしょう。全ての人は、自分自身が優先的に救われる理由を幾つも持っていますから、そのようなものを考慮し始めるとキリがないのです。重症度なども正確な判断などできる訳がありません。 混乱を防ぐために必要なことを列挙します。 （１）リーダーシップの確立 病院長が心身ともに健在であり、指揮できる状態であれば、病院長がリーダーを務めなければなりません。病院長が指揮できない場合に備えて、次級者、次々級者をあらかじめ決めておくとよいでしょう。指揮所を定めましょう。 （２）民主主義的な秩序の健在を示す 病院内外の社会的な秩序が保たれていることを示し続けましょう。被災を免れた地域から救援が来ることへの希望を持ち続けましょう。秩序回復への期待感が混乱を防ぎます。混乱した地域への救援は遅れます。治安回復が優先事項になるからです。 （３）組織的な情報収集 指揮所に情報管理の専任者を置き、病院の人的?物的被害について情報を指揮所に集めましょう。指揮所に来れば誰でも情報を共有できるようにしましょう。指揮所に情報の中枢機能を持たせ、デマの発生などを防ぎましょう。被災を免れた病院機能を用いて受け入れ準備をしましょう。トランシーバーを購入しておくなど、ふだんから災害時のコミュニケーションについて準備をしておきましょう。 （４）治療基準の決定 病院長は、病院の残存能力でできること、できないことを見極めて、周囲の被災状況等から見ても社会的妥当性があると評価されるような治療基準を決め、病院全体で治療基準の適用を守らせる必要があります。みんなで守るために、治療基準には一貫性と柔軟性の両方が必要です。近隣の病院同士は日頃から人的交流を行い、災害時の協力をスムーズに行えるようにしておく必要があるでしょう。 ここに書くようなことではないかもしれませんが、ケガで大騒ぎするような患者は、騒ぐだけの元気があると判断され、戦場でも治療は後回しにされたようです。災害時の治療基準については、普段から研究しておく価値があるでしょう。 （５）迅速な外来患者受け入れと居場所の固定 大量の外来患者を受け入れるときに、最も重要なポイントは、混乱させないことです。多くの傷病者が治療を求めてあちらこちらをさまよい動くような状況は一番良くないことであり、必ずどこかで秩序破壊が起こります。それを避けるために、まず受け入れ場所を明示しておきましょう。また受け入れ時の事務手続きを簡素化し、迅速に行って、受診手続きの終わっていない傷病者（つまり自由に動ける人々）がウロつくようなことが無いようにしましょう。 受け入れた患者や付添人の待機場所を固定しましょう。軍隊は大量の担架（可搬簡易寝台）を保有しています。受け入れ患者を整然と並べた担架上に固定し、勝