moneyの 再検討と批判的注解※ - libir.soka.ac.jp.pdfVIP

1 LucasのExpectationsandtheNeutralityof Moneyの再検討 と批 判 的注解 ※ 1つの覚書 AnExaminationandCriticalNoteonLucass E xpectationsandtheNeutralityofMoney 芳賀半次郎 ・板垣有記輔 HanjiroHAGA・YukioITAGAKI 1.は じめ に ルーカスの標記論文 については,すでに,内外 において多 くの人び とによって論ぜ られ ,ルー カス 自身によって も自分の論文の一部の,しか し,かな り重要な部分の誤 りが表明 されてお り , 例 えば,証 明のある部分はinvalidで,また,他 の部分はincorrectであるとはっきり記 しているのである1).最近は岩 田によっても数学的検討が加 えられ,考究が一層深 められ るに 至 った2)、 この ように,ルーカスのこの古典的論文については多 く語 られ,し か も当のアメ リカにおい てさえ,この学派への関心はピークを越 しつつある折,さ らに,これ以上論ず る必要がないよ うに思われ る. しか し,そ もそもこの論文は,単 に純粋 に理論経済学の世界の議論 にとどまることなく,裁 量的経済政策,い な経済政策一般の非有効性 と有効性 をめ ぐっての激 しい論争へ と導いて行っ たものなのである.そして,事実ルーカスの論文 自体,その ような論争 を惹 き起 こす論点を持 っ ていたのである.この論文によってルーカスはミュースを発展 させいわゆる合理的予想学派 を 形成 し,経済政策の非有効性 の論者の理論的支柱 となったことは周知のことである.われわれ は,経済政策の非有効性の立場 をとるものでは決 してないが,われわれが,あえて,この度ルー カスのこの論文を取 り上げるのは,彼 の論文をまずできるだけ忠実に理解す ることに努めると ともに,そのモデルの もつ問題性 を合わせて指摘 し,経済政策の合理的予想学派の言 うところ ※)本論文 を作成す るに当た り ,石巻専修大学の岩 田恒一教授,東 北大学経済学部の大槻幹郎,細 谷雄三, 佃良彦,池 田昌幸,大 西匡光の諸教授 また,大 学院情報科学研究科の鈴木篤教授,お よび創価大学経済学 部の池 田貞雄教授,東 京国際大学二階堂副包教授,学 習院大学小 山昭雄教授 に,多大の御教示 をいただい た.記 して感謝の意 を表 したい.言 うまでもな く,一切の責任 は芳賀 ・板垣のものである . 1)Lucas[21]pユ97. 2)岩 田[11],[12]. 2季 刊 創 価 経 済 論 集Vol.XXIV,No.3 のいわゆる非有効性 をこの論文を通 して内在的に批判す ることにあったのである.そして多面, 従来の考察は伝統的な経済学的思考の枠組への架橋 についての考慮が余 り払われていず,そ の ために経済学者の理解 を困難にした面 もあった.わ れわれは,正統的一般均衡理論への架橋 を 試みるつ もりである.そ してその架橋が どの程度可能か,さ らに進んで,ル ーカル理論はどの ように従来の一般均衡理論 と異なっているかについても触れ るつ もりである.ま た,ル ーカス 自身はもちろん,こ の論文を考察 した他の経済者 によっても高度の数学的展開が試み られてい るのであるが,例 えば,ル ーカスによってaplausibleconjectureであるとされ,し か も, 彼の体系の均衡解の存在 とその一義性の証明において極めて重要な役割を演 じていた 均「衡価 格関数(theequilibriumpricefunction)」についてもあま