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OICE Discussion Paper Series (ODP) AMT-05 中国農業の特徴と変革 松本 亜沙美 1． はじめに 中国において、農業・農村・農民問題というのは大変重要なものである。それを前回のレポートでは出稼ぎ と三農問題について調べてきた。今回も更に中国の農業の特徴および変革について考察していこうと思う。 ２．農業の特徴 計画経済時代には、農村は農業生産を行う役目を付与され、その農業はまた食糧の増産を要とする政策の 下で人民公社によって経営された。農村＝農業＝食糧という政策の下で、産業構造および就業構造には大きな 変化がみられなかった。それに農村から都市への人口移動に対する厳しい制限もあって、農村人口の比率は第 一次産業総生産の割合に較べて異常な高水準を保った。(厳 2004 P88.89) 中国が農村・農民国家である特徴を示してみよう。新中国が成立した直後の 1952 年に、農村人口、第一 次産業の就業者および総生産の対全体比率はそれぞれ88％，51% 84%であった。半世紀経った2001 年には、 それぞれが62% 15% 50% と大幅に下降した。数字上ではあるが、中国の農村・農業の姿はいまだに1930 年代の日本のそれと重なる。「世界の工場」として注目される中国は農民国家という側面もあわせもつのであ る。(加藤 2004 P88 ) 中国では、人口対土地の圧力が強く、農村には膨大な過剰労働力が滞積している。内陸地域ではそれが特 に深刻である。国民１人当たりの耕地面積は0.10ha と日本の３倍強に相当するものの、農業就業者１人当 たりでみると、中国は日本の５分の1 にも及ばない。しかし、希少な耕地資源でありながら、中国は95%以 上の食糧自給率を実現している。中国農業は、アメリカやヨーロッパと異なり、土地生産性を追及するアジ ア型農業の特徴をもっている。 また、もう一つの中国農業の特徴として兼業農家の絶えざる増殖である。土地制度や戸籍制度の制約によ って、大規模な労働力の産業間移動が起きているにもかかわらず、農家世帯数はまったく減少していない。 実際1985 年以降の15 年間で農家数は25% も増えた。これは日本、韓国、台湾の経済成長過程に見られた 農家数の減少と大きく異なる。農家の兼業化が定着しており、効率的な大規模経営の実現は難しい状況にあ る。(厳 2004 P90) ３．農地の所有制度 1950 年代半ば頃までの中国農村には土地私有制下の自作農制度があった。しかし、その直後の合作化、 人民公社運動ですべての農地は生産隊の集団所有制である。いまの中国農業は、集団所有となった。以来、 農業改革で家族営農制度が確立した後も、農地の集団所有制は変わっていない。いまの中国農業は、集団所 有の農地を農家が請け負って経営する形を採っている。農業生産請負制が導入された当初、農地が生産隊内 のメンバー間で均分にみられる土地なし農民層の貧困化は回避できたものの、均質的な小農経営があまりに も非効率的であることも明らかである。(厳 2004 P90) 農地の流動化を促し、競争力ある大規模経営農家を育成するために、中国政府は 1990 年代半ば、農地の 請負期間をさらに30 年延長することを決めた。そして、2002 年8 月、それまでの農地政策を踏まえて「農 村土地請負法」が制定された。農地の所有権を変えず、農家の請負権を保証するうえでの経営権の流動化を 奨励することが明文化された。ところが、一部の地域を除き、農地の流動がごく限られている。所有権・請 1 Copyright Reserved 2009 OICE Discussion Paper Series (ODP) AMT-05 負権・経営権の分立を骨子とする新しい農地制度は所期の効果を発揮していないようである。 ４．改革開放時代の５大変革 改革開放後の中国農村で、様々な制度改革が試みられたが、ここでは、農村の社会経済ないし中国全体の 構造変革を象徴する５つの大きな出来事を整理する。 第一