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「量子と情報」第1 回研究終了報告会 要旨集(2006.11.16) 多体量子系としての量子計算機の分析 Analysis of quantum computers as many-body quantum systems 清水明 Akira Shimizu 東京大学大学院総合文化研究科 The University of Tokyo 概要： 量子計算機の物理的実態は、多体量子系と考えるのが自然である。従って、量子計算 機におけるエンタングルメントは、量子情報理論で言うところの「多地点のエンタングルメント」 になり、２地点の場合とは違って無数の種類がある。その中で、マクロに異なる状態たちの重 ね合わせ（筆者は macroscopically entangled state と呼ぶ）が、量子計算機の（古典計算機に 比べての）スピードアップに本質的な役割を演じていることを強く示唆する証拠を得た。また、 多体量子系の macroscopic entanglement の物理を様々な観点から調べ、様々な系に応用した。 さらに、そもそも「マクロに異なる状態たちの重ね合わせ」という概念自体が曖昧なものであっ たが、これについてもきちんとした定義を与え、その物理を明らかにした。 【研究のねらい】 量子計算機と古典計算機の のような conjecture を発表した（正確な表現 性能の差が顕著に出るのは、大きなデータを は[9]に記した) [2] ：ある問題を古典計算機よ 扱うときであるから [1] 、意味のある量子計 りもずっと速く解くような量子計算機は、マ 算機には多くの量子状態が必要である。これ クロに異なる状態たちの重ね合わせ（これを を実現するための物理系は、原理的には多準 筆者は macroscopically entangled state と呼 位の１自由度系（たとえば１個の水素原子） んでいる）を計算の途中に使うのではない でも構わないのだが、様々な要素を勘案する か？そしてそれが量子計算機のスピードアッ と、少数の準位を持つ系（たとえば２準位系 プに本質的な役割を演じているのではない ＝キュービット）が空間的に広がって配置さ か？ れている系を想定するのが自然である。つま 本研究の目的は、この conjecture の真偽 り、量子計算機の物理的実態は、多体量子系 を調べて上記の基本的な問いかけに解答を与 と考えるのが自然である。 えることと、多体量子系の macroscopic 量子計算機にはエンタングルメントが現れ entanglement の物理を明らかにすることに るが、上記のような多体量子系のエンタング ある。そもそも、「マクロに異なる状態たちの ルメントは、量子情報理論で言うところの「多 重ね合わせ」という概念自体が曖昧なもので 地点のエンタングルメント」になるので、「２ あったが、これについてもきちんとした定義 地点のエンタングルメント」とは違って、無 を与え、その物理を調べる。 数の種類がある。では、どんな種類のエンタ ングルメントが、量子計算機の（古典計算機 【研究方法】 多体量子系の 「マクロに異なる に比べての）スピードアップに本質的な役割 状態たちの重ね