Appendixを利用した温度校正方法.pdfVIP

Appendix 市販の環境試験器(恒温槽) を利用した温度校正方法 電子回路設計に従事している技術者自身が手持ちの温度 ●温度校正のための改良方法 計測機器を数十mK 程度の精度で校正したい場合、また、 環境試験器SU-240 の恒温槽内の時間的、空間的温度変 回路に用いている電子部品の特性を環境温度が数十mK 程 動が 0.1℃位であることは市販の環境試験器としては高い 度の安定度で計測したいと考える場合が多々あると思いま 性能であると言えますが、温度精度が数十mK 程度での校 す。しかしながら、設計室や試験室に設置してある市販の 正には更に時間的、空間的温度変動を抑える必要がありま 環境試験器(恒温槽)の大半は±0.1～0.5℃の温度安定度し す。 か有していません。また、温度安定度が数十mK の市販の このための改良として図4 に示すように、アルミボック 恒温槽は非常に高価であり、簡単に設備導入する訳にはい スを恒温槽内に配置します。また、アルミボックス内には かないのが現状ではないかと思います。 モータファンを設置しアルミボックス内の空気を十分に撹 そこで、温度安定度±0.1～0.5℃の市販の環境試験器(恒 拌します。そして、校正用の標準温度センサと被校正用の 温槽) を利用して簡易に精度が数十mK 程度の温度校正が 温度センサをこのアルミボックス内に配置します。 出来る方法を提案します。 すなわち、このアルミボックスは簡易な恒温槽としての ●市販環境試験器の槽内温度の安定性 役目を持ち、このアルミボックスを試験器の槽内に設置す 市販の環境試験器(恒温槽)は数多くありますが、今回は ることにより二重の恒温槽として働くことになります。熱 小型環境試験器SU-240(ESPEC)を用いて、その試験器の 伝導率の高い(熱抵抗の小さい)アルミニウムの板に覆うこ 槽内温度の安定性を求めます。槽内温度の測定には4 本の とによりアルミボックス表面の温度は均一になり、モータ 温度センサの値を同時、且つ、高精度に測定できる温度計 ファンで空気を撹拌することによりアルミボックス内の空 測機器SP-3000( 田澤RD 技術士事務所製) を用います。 気の温度は空間的に均一になり、また、アルミボックスの まず最初に、4 本の温度センサ ch1,ch2,ch3,ch4 をまと 大きな熱容量は電気回路で言えばCR ローパスフィルタの めて槽内中心に配置し、槽内温度を測定します。この結果 役目をはたすためアルミボックス内の温度が時間的に平均 を図１に示します。 化されます。(詳細はトランジスタ技術「白金測温抵抗体と すなわち、温度幅 0.1℃位の時間的変動があることが分か 熱電対の正しい使いかた(前編)」Appendix を参照) ります。 ただし、モータファンによりアルミボックス内の空気を 次に、4 本の温度センサを図２のように槽内の各位置に 十分に撹拌する必要があり、モータファンの選定において 配置し、槽内温度の空間分布を測定します。この結果を図 は次の注意点が重要です。 ３に示します。すなわち、温度の時間的変動に加えて温度 ・ 消費電力が出来るだけ小さいモータファンを選定す 幅0.1℃位の空間的変動があることが分かります。 る。(発熱の影響を抑える) 1 ・ 同一性能のモータファンをアルミボックスの両側に 0.95 ch1 設置する。(新たな温度不均一を抑える)