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岩石礦物膿床學 第 五 巻 第 四 號 昭和六年四月一日 研 究 報 文 六連島産玄武岩中のアノマイト式雲母の 化學分子式に對する一考察 理學博士 神 津 俶 祐 理學士 鶴見 志津 夫 六連島に産する玄武岩中多孔質の者には,其 孔膣中に褐色を呈する鱗片 状のアノマイト式雲母を産するは周知の事實なり。母岩の一孔腔中には數 片の雲母互に交叉貫通して發達し,鱗片の大なる者は長さ1cmに 達する者 あるも, 5～6mmを 普通とし,僅かに1mmに 達する小片も亦少からず。 前報告1)に於て既に記述せるが如く,本雲母片は母岩の孔腔内壁に其一部 分を貫入して固着する者あるは,顯微鏡下にて明かに認むるを得るなり。 故に本礦物は孔腔内に二次的に形成せられたる者にあらずして,其母岩た る立武岩發達史の一主要部を占むる,一次的成因の者なり。 本雲母の光學位は普通の黒雲母と異なり,アノマイト式なるは既に諸人 1) 神津俶祐,吉 本文平,岩 石礦物礦床學一巻, 153～161, 1929. 156(2) 岩 石 礦 物 礦 床 學 の注意せる所なれども,この式に〓する黒雲母は,他の黒雲母即ちメロキシ ーン式に比して ,高温に對し安定なるは,筆者の一人(S. K.)と 吉木學士1)と の研究によりて明かとなれり。其屈折率及光軸角は既に發表せるも本論文 に於て比較考究する必要あれば更に再記せん即ち a=1.557, γ=1.605, 2E=22° ～32°. なり。本雲母の比重をウエストフアール・バランスにて測定せる結果は次 の如し。 2.966 at 23℃ 本論文に於てはこの特種の雲母の化學成分と其化學分子式に就きて聊か 考察せんとす。 化 學 成 分 本玄武岩を粉細して孔腔中より雲母を取出し,注意して不純物を除去し, 化學分析を行へり。其結果は第一表に示すが如し。 第 一 表 Anomite from Mutsure-jima 1) 神津俶祐,吉 承文平,地 球9.330～338, 1928. 研 究 報 文 157(3) 第一表に見るが如く,本雲母はFe2O3+FeOを10%以 上含み且つMgO 得るも, MgOの 多きはPhlogopiteに 近づけり。 本雲母の化學分析の結果中にて,吾人の最も注意を惹くは, Al2O3の10 %に 充たざる少量にして,既に發表せられたる,多くの鐵苦土雲母の分析を 見るも,かくの如き例は極めて稀なり。故に此點は充分吟味を要する所な れば,本雲母を再び分析して,幾何の實駿上の誤差を生ずるかを檢せり。即 及其他3成 分の分析を行ひたり。猶一〓正確を期せん爲め八木學士に依頼 其結果は第二表に見るが如し。 第 二 表 第二表を第一表と比較するに,其差は極 めて小にして,實験上の誤差の範圍内〓を出 でず。故に第一表に與へたるAl2O3の 少量 なるは本雲母の特質と確定するを得べし。 雲母族中Manganophyllite1)はAl2O3の 量10%に 充た