防衛装備移転三原則と装備品産業の動向―国際市場からみ.PDFVIP

防衛装備移転三原則と装備品産業の動向 ―国際市場からみた日本製品の位置づけに関する考察― 防衛ジャーナリスト　桜林　美佐 対策なども一定割合を占めるために、新規装備品購 　輸出に対する誤解 入に充てられる一般物件費は20％ほどしかない。消 費増税分や為替差損分などは考慮されていないこと 　わが国の防衛産業とは？　また、武器輸出とは？　 や、装備品の高性能化により維持・整備費の割合が その認識については世間一般のみならず政治家の知 増加していることから平成17年度から新規装備品契 識も現実とのギャップが著しい。ここでは最近の装 約額を維持・整備費用が上回る逆転現象が生起し、 備品移転をめぐる流れや、世の中で報じられている 国内防衛関連企業の多くは防衛予算増額の恩恵を受 「幻想」とかけ離れた真実の姿をお伝えしたい。 けていない。 　昨年は、これまで防衛装備品の輸出をほぼ全面的 　防衛関連企業の体力低下はつとに著しく、防衛省 に禁止していた武器輸出３原則等を見直し、新しい が行ったアンケート調査によれば、防衛関連企業約 装備移転のルールができるなどの動きもあり、大き 60社の年間操業時間は、平成15年と平成19年を比較 なニュースとなった。時を同じくして「集団的自衛 して180万時間以上低下しており、また、防衛事業 権」の行使容認についても連日で報じられ、本来は から撤退する企業も相次ぎ、防衛省で把握している 同盟国との共同開発や共同運用・整備といった観点 だけでも、戦闘車両、艦船、戦闘機関連企業だけで から関連付けて様々な検討がなされてしかるべきで も82社が、撤退又は撤退を表明している（平成22年 あろうが、いずれも、正確ではない偏った話の方が 度防衛省資料）。 ほとんどであり、真に日本の安全保障を考える人に 　こうした状況から、防衛生産・技術基盤を維持す とっては、テレビがますます嫌いになった年ではな る観点でも「武器輸出３原則」を見直し、輸出でき かっただろうか。 るようになれば防衛省・自衛隊の調達単価も下が 　わが国の装備移転について述べるにあたり、まず り、防衛産業支援策になるのはないかという考え方 は自衛隊と日本の防衛予算がどのような状況にある が生れたのである。 かをご理解頂かなくては始まらないが、これについ 　しかしこの仮説はそもそも成り立っていなかった ても誤解がすこぶる多い。 のである。今から７年ほど前だっただろうか、防衛 　安倍政権が誕生し、平成14年度～24年度まで減少 装備品を製造する主な企業が集まった席で防衛省の が続いた防衛予算は平成25年度より「増額」と報じ ある部署が武器輸出解禁についてどう思うか問う られているが、実質的には増額していない。これ と、「賛成」と答えたのは10社いるうちのわずか１ は、東日本大震災の復興予算のための国家公務員給 社であったと聞いたことがあった。そしてこの状況 与削減分が２年ぶりに戻った分がほとんどで、防衛 は現在も変わっていない。むしろ余計に警戒心を強 予算の40％以上を人件糧食費が占めている構造から めていると言ってもいいのかもしれない。 すれば周知の事実