本当 のインバスケット 技法.pdf

本当のインバスケッ ト技法 ─ A T rue In-Basket Technique ─ ＊1 伊　藤　隆　一　 ＊2 鰺　坂　登志雄　 ＊3 荒　田　芳　幸　 ＊4 伊　藤　ひろみ ＊5 大　林　純　子　 ＊6 小　林　和　久　 ＊7 佐　藤　　　透　 ＊8 谷　 口　暢　子 （1）はじめに 本稿では、慶應義塾大学　故 関本 昌秀 名誉教授、故 槇田 仁 名誉教授の開発 した複数の 日本版 インバ スケ ッ ト技法 （関本 ・佐野 ・槇 田、1977 ：槇 田 ・佐 野 ・関本 ・荒田、1981）を原点 とした、 ヒューマ ン ・スキル を重視 した能力開 発用インバスケ ッ ト技法、「槇田パ ーソナ リテ ィ研究所 （MPI）版 インバスケ ッ ト・ゲーム」開発の第 1段階について報告する。 インバ スケ ッ ト技法は、1952 年 に、プ リンス トン大学のEducational Testing Service （ETS）が米空軍の人事 ・教育研究所か ら、「空軍の Command and Staff School の教育 ・訓練がどうした ら好 ましい結果 を生み出すようになるか、 また、 訓練の 目的がどの程度達成できたかを測 るための うまい方法はないか」 とい う課 題を 研 究 して も らい た い との依 頼 を受 け、 ノ ー マ ン ・フ レデ リク セ ン （ Frederiksen, N.）の監督の下に開発 されたもので、その 目的は、教育 ・訓練 な らびに教育効果の測定 とい う点にあった （佐野 ・槇田 ・関本、1987 ：槇田 ・伊 藤 ・小林 ・荒田ほか、2008）。 しか し、巷間にひろまるにつれて、インバスケッ ト技法は、能力開発や教育 ・ 訓練技法 としてよりも人事アセスメン トの技法 としての意味合いが強調 されるよ うになっていった。 日本において も、関本 らが最初に開発 したインバスケッ ト技 法はアセスメン ト・ツールである。 その後 1990 〜2000 年代、わが国においては、評価 を嫌う産業界の風土や評価 のできない管理者の存在か らか、人事アセスメン ト・ツール としてのインバスケ ッ ト技法の開発 と活用は下火 となっていった。わずかに、 ヒューマン ・アセスメ ン トの技法の一つ として、企業各社が自社版のインバスケッ ト・テス トを開発 し、 — 1 — 活用 していたくらいのものである。 わが国においてインバスケッ ト技法が再び日の目を見るようになったのは、鳥 原 隆志 ・長友 隆司 とい った企業 出身 の研修 コ ンサル タ ン トの活躍 （鳥原 、 2011 ：鳥原、2013 ：長友、2011 など）のおかげである。われわれは彼 らの活 躍を多 とす る気持ち大である。 しか し、必ず しもそれを喜んでばか りはいない。 彼 らの著書か ら浮かび上がるインバスケッ ト技法像は、ケース ・スタデ ィのよう にインバスケッ ト問題 を解く意思決定能力や管理能力だけを重視 しているように も見える。インバスケッ ト技法は、単に インバスケッ ト問題 を解くだけでなく、 そこか ら垣間見 える企業 ・組織や事業所単位の課題、問題の中で活躍する人物像 を浮き彫りにすることを特徴 としてお り、また、インバスケッ ト問題はそのよう に作成するべ きであろう。 さらに、インバスケッ ト技法 も能力把握のための技法 の 1 つであるか ら、その妥当性 ・信頼性の検証は必要不可欠である。 以下、順 に、われわれが現在進行形 として開発 をすすめているMPI 版 インバ スケッ ト技法像について述べていきたい。 （2）インバスケッ ト技法 とは 『管理能力開発のためのインバスケッ ト・ゲーム ［改訂版］』 （槇田 ・伊藤 ・小 林 ・荒田ほか、2008） をもとに、インバスケッ ト技法について説明 しよう。 インバスケッ ト技法は、その名が示す とお り、管理職の机の上のインバスケッ ト （ In-Basket ：未決箱）の中に入っている未決済の書類や報告書、手紙、メモ、 メールなどを、そのポス トの管理職になったつ もりで、限