ボクセル解析法とcae - riken.go.jp.pdfVIP

ボクセル解析法とＣＡＥ 鈴木克幸 東京大学大学院新領域創成科学研究科 katsu@k.u-tokyo.ac.jp １．ＣＡＥにおけるモデリング 工業製品の設計におけるCAE （Computer Aided Engineering）の利用は急速に進んでいる。設計と解析の統合 のためには設計モデルをそのまま用いて解析を行い、その解析結果に基づく設計変更をダイレクトに設計モデ ルに反映させることが望ましい。ところが、現状の有限要素解析ではこのようなモデルの統合は困難である。 現在の一般的な有限要素解析モデルの作成の手順は図1 のように2 つの段階に分けて考えることができる。 すなわち、 ・解析対象の形状の簡略化、および解析条件（荷重条件、指示条件など）の設定 ・簡略化モデルに対する、有限要素メッシュの生成 である。また、近年材料の微視構造までを考えた解析がしばしば行われるが、材料の微視構造は３次元的で、 しかもある種の「乱雑さ」を持っており、CAD 等による形状モデルの生成自体が困難である。多くの場合、 形状モデルとして、ある程度形状を簡略化したりランダムさを取り除いた簡略化モデルが用いられる。(図2) 設計モデル 簡略モデル 解析モデル 形状の簡略化 解析条件の設定 メッシュ生成 図1 設計モデルから解析モデルの生成の流れ 簡略化モデルの生成 有限要素メッシュの生成 図2 自然物の解析における解析モデルの生成の流れ この簡略化はメッシュ生成の限界から必要になってくるが、自動化する事は非常に困難で、ほとんどエンジ ニアの手作業に頼っているのが現状である。実際、極端な場合にはCAD のデータを基に解析モデルを生成す るよりも、ゼロから解析モデルを作成し直した方が結果的に簡単にモデルを生成できるケースも少なくない。 形状フィーチャを用いてこれを自動化しようという試みもあるが、一般化は難しい。また、メッシュ生成の過 程に関しては、かなり自動化は進んでいるが、特に３次元ソリッドに対してまだまだ問題は残っており、凹部 の非常に多い複雑な形状に対しては4 面体によるメッシュでさえ生成できない場合も多い。 ２．ボクセルを用いた解析法 この解析モデルの生成の問題に対し、ボクセルを用いた解析法が注目を集めている。3 次元形状のボクセル 分割は、非常に複雑なCAD モデルに対しても容易に、しかも確実に行うことができる。そこで解析を行いた い３次元ソリッドに対し、ボクセル分割を行い、それを要素として捕らえるのがボクセル解析である。また、 CAD モデルのない材料等の複雑なモデルに対しても、CT スキャン等の断面写真を重ね合わせることによりボ クセルモデルを生成することが出来る。このため、例えば従来の有限要素解析が図1 のようなプロセスを経て いたのに対して、材料の実物のモデルから図3 のように直接メッシュ生成を行うことも可能になる。すなわち、 前述のようなプリプロセッシングをすべて人手を介さずに自動化することができる。この方法は、いわゆる「要 素」は存在するが、メッシュ分割が非常に容易に行えるという意味でメッシュレス法の１つといえる。 この考え方は、Hollister Kikuchi1)、 Terada Kikuchi2) によって複合材料のような非常に複雑な形状の対象 に対して適用され、また、機械部品に対しても㈱くいんとにより VOXELCON3) として実用化されはじめてい る。また、日産の鳥垣ら4) も独自にボクセル解析の自動車解析への適用を進めている。 設計モデル 解析モデル 実際の材料 解析モデル 図3. ボクセルベースの解析