04_国民経済計算とマクロ経済理論（改訂）.pptVIP

* 　統計上はともかくとして，現実には，日本の経済活動はどのような要因で決まっているのでしょうか？つまり、国内総生産や国民所得はどのように決まり、景気の変動はなぜ生じるのでしょうか？この問いに答えることは，マクロ経済学の最も重要な課題の一つです。 　マクロ経済理論は，ミクロ経済学と同じように需要と供給および市場均衡という概念を基礎にしています。しかし、ミクロとミクロでは需要と供給が均衡に至る仕組みは必ずしも同じではありません。 * 　これについて，パンの需要と供給の例で考えてみましょう。 　消費者は、食事のためにパンを買おうと考えています。消費者が買おうとするパンの量を需要と言います。一方、パン屋さんは、パンを売って利益を上げようと考えています。パン屋が作って売ろうとするパンの量を供給と言います。 　もし，パンの需要がパンの供給より小さいと，パンが売れ残ってパン屋さんは困ります。その際，パン屋はパンの生産量をもっと減らすか、売れ残り分をもっと安い値段で売ろうとするでしょう。 　逆に、パンの需要がパンの供給より大きいと，消費者の中にはパンを買いたくても買えない人が出てきます。その際、パン屋はパンの生産量を増やすか、パンの値段をもっと高くするでしょう。 　その結果として、値段が上がったり下がったりすると，消費者の方もパンを買い控えたり、もっと買うように行動を変化させますから、パンの需要と供給はまだまだ変化してゆきます。しかし、ちょうど需要と供給が等しくなるような値段となれば、売れ残りも不足もなくなります。これを市場均衡と呼びます。 　 * 　あくまで、以上の図解はパンの個別市場に過ぎません。経済には他にも財の数だけ無数の個別市場があります。ここで、視野を一　国全体に広げてみましょう。マクロ経済学では、パンだけでなく国内で生産された全ての財に対する需要量を金額に換算し、一国全体で集計したものを総需要として把握します。先の説明より総需要は，民間消費、民間投資、政府支出、純輸出（輸出－輸入）からなります。一方、一国全体で生産されたさまざまな財やサービスの量を、金額として合算したものが総生産にあたります。総生産と総供給はほぼ同じ意味です。 　総生産は政府?企業?家計に分配されて総所得となり、それが消費?投資?政府支出?輸出という項目に支出されます。輸出は所得の流出ですが、輸入は所得の流入ということになります。これらを差し引きした純輸出（輸出－輸入）が、国内で生産された財に対する総需要に寄与します（YD=C+I+G+EX-IM）。全体としてとらえれば、支出と生産は表裏一体、支出が増えれば生産が増え、所得が増え、また支出が増えるという関係にあります。 　ただし、これまで述べたように、総需要と総生産は常に等しいとは限りません。現実社会では、企業は財が売れる前にすでに生産しているからです。国全体での購入額である総需要が，国内での生産額である総生産より小さいときには，売れ残りが発生し，生産側では在庫の増加（正の在庫投資）が起こります。逆に，総需要が総生産より大きいときには，生産不足の状態となり，在庫の減少（負の在庫投資）が起こります。それに対して、在庫投資がゼロとなる場合、すなわちちょうど総生産と総需要が一致している状態が市場均衡で、ここで総生産や物価が安定することになります。 　では，総需要と総供給はどういうメカニズムで一致するのでしょうか。それには，新古典派経済学とケインズ経済学という２つの考え方があります。 ケインズ経済学は、20世紀初期のイギリスの経済学者、ジョン?メイナード?ケインズ(John Maynard Keynes)の理論を発展させたものです。 * 　新古典派経済学は，経済学が生まれた初期の古典派経済学の流れを汲むものです。新古典派では、総需要は総供給の側から決まると考えました。いわば、生産はそのまま需要につながり、生産された財は結局すべて買われる、という考え方です。その調整メカニズムの根底にあるのは，財の値段，価格による調整です。　もし、国全体で生産された財の合計金額である総供給が総需要よりも少なければ（つまり超過需要ならば），モノやサービスの価格が全体として上昇する（つまり物価が上昇する）ことで総需要が減少し、総供給が増加します。最終的には，生産されたものがすべて売れるようになるまで，つまり，総需要と総供給が均衡するまで物価上昇が続くことになります。逆に，総供給よりも総需要が小さい状況（超過供給）では、物価が下落することによって、総需要が増加し、総供給が減少することで均衡に達します。 　価格の変化により、総需要と総供給が調整される機能を価格メカニズムと呼びましょう。新古典派の考え方では，人々は働きたいだけ働き，企業