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Reitaku International Journal of Economic Studies Vol.18, No.1, March 2010 経営理念はパフォーマンスに影響を及ぼすか ――経営理念の浸透に関する調査結果をもとに―― 髙 巖1） 理念の浸透の水準、経営理念浸透の水準に影 はじめに 響を与える要因、経営理念の浸透とパフォー 近年、経営理念の浸透を軸にしたミッショ マンスの関係を統合的に捉えるモデルを提示 ン志向経営が注目されている。著者らの研究 していく。そして、最後に、提示するモデル チームは、2009年 2 月に新日本有限責任監査 のインプリケーションについて言及したい。 法人が主催するシンポジウムにおいて「組織 を変えるミッション志向の経営」という表題 1. 本研究の狙い を掲げ、経営理念の浸透に関する調査結果を 約1, 000名の聴衆の前で発表した。その発表 ⑴ 研究を開始した背景 への反響は非常に大きく、関心を持つ実務家 さまざまな企業の不祥事などをきっかけと から多数の問い合わせを受けてきた。また、 して、経営理念への注目が実業界を中心に高 これに関し『日経ビジネス』でも特集の一部 まりつつある。多くの日本企業では、経営理 として紹介された（『日経ビジネス』2009 年 念2） が掲げられ、理念の浸透・定着を目指 4 月20 日号）。 したさまざまな取り組みが盛んになされてき われわれは、今後、精緻な分析を実施した た。経営理念を制定したり、浸透施策を実施 上で、調査結果を細部に分けて順次公表し したりするようになった経緯や狙いは、個々 いくことを予定しているが、その反響の大き の企業で異なっているかもしれないが、少な さを踏まえ、荒削りでも調査結果の全体をま くとも実業界では「経営理念が企業の成長や ず論文として発表することが重要であると考 存続に資する」との理解は、一般的になっ えるに至った。そこで、同シンポジウムで紹 いると言ってよかろう。 介した調査結果の内容―若干の補足も行いな 田中（2006）は、経営理念の機能を、①企 がら―をまとめることとした。 業内統合の原理と②社会的適応の原理に分類 本稿では、最初に、本研究の狙いを紹介し、 した上で、①については、(a)成員統合機能 質問紙調査の概要を述べる。その上で、経営 （バックボーン機能／一体感を醸成する機能） 1） 本稿は、京都大学経営管理大学院京セラ経営哲学寄附講座 における研究活動の一環 として行った調査をまとめたも のである。調査は、約 2 年 間をかけ、京大客員教授 の高尾義明 （首都大学東京教授）、同大助教の王英燕 （広島市立 大学講 ）、髙 （京大客員教授、麗澤大学教授）の 3 人で、計画 ・実施・分析してきた。調査チームを代表し、京セ ラ株式会社による理解と支援 に対 し、心より謝意 を表したい。 2） 本稿では、組織体として公表している、成文化 された価値観や信念を経営理念と捉えている。なお、多くの研究と 同様 に、実際の企業の経営理念を取り扱 う際には、同定義 を満たしていれば、企業理念、社是 ・社訓、ミッション・ ステー トメン トと表記 されているものも