自然共生环境推进.pdfVIP

第２章　自然と共に生きることができる環境の推進のために 第１節　生物の多様性の確保 (1)　野生動植物の生息、生育状況調査 　自然界の多様な野生生物はそれぞれが有機物の生産、消費、分解などの役割を担いながら、 互いに網の目のような関係を結んで、生態系の循環システムを形作っており、生物の多様性は 自然環境の豊かさの指標ともなっている。しかし、近年では、開発や乱獲、環境汚染など様々 な人間活動により、生物の多様性が急激に減少している。生物多様性の確保のためには、県内 の生物の多様性の状況を適切に把握、評価することが重要であり、県では各種調査を実施する とともに、その成果については、報告書としてのほかインターネットホームページ 「みどりの データバンク」を通じ積極的に提供している。 ア　自然環境保全基礎調査 　県では、環境庁の委託を受けて、昭和48年度以降自然環境保全基礎調査を継続して実施し ているが、平成６年度からは生物多様性保全のための基礎資料とするため、野生動植物の分布 概況および 「特に生存基盤が脆弱で、減少傾向にある種」について詳細な分布と生育状況の調 査を行っている。 イ　自然環境管理計画 　県では、昭和60年度に貴重な動植物、特異な地形地質、すぐれた景観等の分布状況等を取 りまとめた 「みどりのデ－タバンク」を作成し、自然保護行政や環境アセスメントの基礎資料 として、活用を図ってきた。しかしながら、作成後、10年余が経過していること、身近な自 然環境の保全、生物多様性、種の絶滅、保存といった新たな課題に対応する必要があること等 の理由により、平成４年度～10年度において 「自然環境管理計画」の策定事業を実施した。 　 「自然環境管理計画」では、「みどりのデ－タバンク」のデ－タの更新を行なうとともに、 本県の自然環境の特性、保護、保全すべき動植物 ・地形等、保全上配慮すべき事項等を取りま とめ、各種開発行為との調和を図りつつ、自然環境を適正に保全するため活用している。 ウ　レッドデータブック作成 　近年、各種の自然環境の改変、土地利用形態の変更等に伴い野生動植物の生息、生育に対す る影響が増大し、本県においても特定の生物種の著しい減少が見られていることから、県域に おける健全な生物多様性確保を図るため、平成11年度より野生生物の生息生育状況を評価し、 絶滅に瀕している野生生物の現状を取りまとめた資料 （レッドデータブック）の作成事業に着 手している。 (2)　ビオト－プのネットワ－クの形成 　ビオト－プは 「野生生物の生息空間、生物の回廊」等と訳され、多種類の動物・植物が一つ の生態系を構成し、共同体として生息・生育できる、あるまとまりをもった環境を意味してい る。生物の多様性を高めていくためにはこうした 「ビオトープ」のネットワークの形成を図る ことが重要であり、今後、技術的手法に関する調査・研究を行うとともに、生き物の生息・生 育環境に配慮した河川 ・緑地の整備、昆虫類の食樹・食草、鳥類が好む実のなる木の植栽など を進めていく。 (3)　絶滅のおそれのある動植物の生息、生育環境の整備 ア　希少野生動植物種保護増殖事業 （アベサンショウウオ） 　アベサンショウウオは、環境庁による 「両生類・爬虫類のレッドリスト」の中で絶滅危惧Ⅰ Ａ類に分類され、また、絶滅の恐れのある野生動植物の種の保存に関する法律に基づく国内希 少野生生物種に指定された非常に貴重な両生類である。 　これまで兵庫県及び京都府のみに分布するとされていたが、福井県内で生息することが確認 された。しかしながら本種に関する本県内の生息状況については全く知られていないため、本 種の保護を適切に図っていくことを目指し、平成10・11年度において生息状況を把握するた めの調査を行った。この結果は、本種の保護のため慎重な配慮を行いつつ、関係機関、研究所 などに提供することで今後の調査研究及び保護対策に活用していく。 イ　希少猛禽類調査事業 （クマタカ） 　クマタカは、国内希少野生動植物種 （絶滅の恐れのある野生動植物の種の保存に関する法 律）、絶滅危惧ＩＢ類 （環境庁レッドデータブック）に指定された希少猛禽類で、本県におい ても、各種開発事業などに伴う自然環境の変化により、生息環境の悪化が指摘されており、絶 滅が危惧されている種である。 　そこで、平成 10・11年度に、今後、各種の重要な事業が集中して予定されている嶺南地域 において、クマタカの生息エリアとその環境、生態等を把握するための調査を実施した。調査 結果は、土地利用のあり方や各種開発事業における配慮