井戸庄-hist.PDFVIP

明治初期の大区小区制の地域性について 井戸庄 ヲ定ムノレ誓ハ，一府ー郡ヲ分テ何区或ハ何十区 はじめに トシ，其一区ヲ定ムノレハ四五丁，モシグハ七八 これまで、刊行された「県史Jl Ii市町村史」の 村ヲ組合スヘシ，然レ共其小ナノレモノハ数十ニ 多くは，明治初期の地方制度の変遷のなかで， 及ヒ大ナノレモノハ一二ニ止ルモ都テ其時宜ト便 大区小区制の項に限って，いかにも自信のなさ 利トニ任セ妨ナシ……但急ニ区画ヲ定メ難キ所 そうな，歯切れの悪い暖味な記述が目につく。 ハ仮ニ便宜ニ従ヒ一村一町ニテ検査セシムルモ その理由は何か。簡単にいえば，大区小区制は， 妨ナシJ (第3則〉と定めているだけで，ほか 府県によってローカリティに富んでおり，必ず に区域に関する詳細な規定はなく，臨機応変の しも中央法令どおりに施行されなかったからで 措置を認めている。戸籍事務を処理する役人 ある。 (地方官〉についても同様で，戸籍法は「各地 大区小区制に界する既往の研究はIi自治五 方ノ便宜ニ随ヒ，予メ区画ヲ定メ，毎区戸長並 十年史(制度篇)Jlをはじめ， 主として中央法 ニ副ヲ置キ，長並ニ副ヲシテ其区内戸数，人員， 令に依拠した亀卦jillJ，福島正夫・徳田良選， 生死，出入等ヲ詳ニスル事ヲ掌ラシムヘシJ(第 大島美津子らの業績と，府県単位の個別事例研 1則〉と定めているものの r戸長ハ必ス長ト 究に分けられるが，両者の聞に大きな懸隔があ 副トニ限ルヘカラス，時宜ニヨリ長冨Jj数名アル ったのは否めない事実である。このような状況 モ妨ナシトス，但戸長ノ務ハ是迄各処ニ於テ荘 のもとで，全国的な広い視野で広島県の大区小 屋，名主，年寄，触頭ト唱ル者等ニ掌ラシムル 区制を研究した甲斐英去の業績はきわめて高く モ，又ハ別人ヲ用ユノレモ妨ナシJ (第2則)と 大幅な選択の余地を残していた。 評価できる。地理学では，山崎謹選による埼玉 県，佐々木清21による静岡県，筆五ーによる滋賀 戸籍法の第2則では，戸長・副戸長と圧屋・ 県のモノグラフがあるぐらいで，大区小区制の 名主・年寄ら旧来の町村役人との関係がはっき りされなかったので，府県によっては両者が併 研究は未開拓の分野といえよう。そこで，これ 置され，一般行政の遂行上，種々困難をきたし までの府県単位の個別事例研究を手短に紹介し， たようである。そこで政府は，明治5年4月9 全国的な広い視野のもとに，大区小区制の府県 日，太政官布告第117号を公布し r荘屋，名 別類型を設定するのが，本稿の大きな狙いであ る。 主，年寄等都テ相廃止，戸長，副戸長ト改称シ， 是迄取扱来{民事務ハ勿論，土地人民ニ関係ノ事 I 大区小区制の施行過程 件ハ一切為取扱侯様可致事」と，戸長・副戸長 の職務内容および権限を明確にしたのである。 まず，中央法令をもとにして，大区小区制の 施行過程の概略を示しておこう。 単一区制から大区小区制への転換は，明治5 明治4年4月4日，戸籍法(太政官布告第 年10月10日の大蔵省達第146号によって，その 170号〉が公布され，戸籍を編成するために新L