下河辺庄.PDFVIP

下河辺庄 （しもこうべのしょう） 現在の称名寺庭園 (写真提供: 神奈川県立金沢文庫) 野田市域の大部分は中世には下総国葛飾郡下河辺庄 (しもうさのくにかつしかぐんしもこうべ のしょう) に属していました。久安 2 年(1146)8 月 10 日の文書には下総国相馬御厨 (そうま のみくりや) の境界として「西限下河辺境并木埼廻谷」 （さいげんしもこうべさかいならびにきさ きめぐりだに） と見えるのでこの頃には荘園として存在したと思われます。現在の古利根川 と江戸川に挾まれた地域で，宮戸川(みやとがわ)の東部を除く茨城県古河市から埼玉県三 郷市付近にいたる狭長にして低湿な地域で、葛飾郡の 3 分の 2 にあたります。地名は利 根川縁辺に位置したことによると思われます。 荘園は、基本的には公的に認められた私領のことで、実際に開墾したのは下河辺氏で す。下河辺氏は下総国守となった源仲政 (みなものとのなかまさ)、その子頼政 (よりまさ) と主 従関係を結び、そのつてで当時の権力者である鳥羽院 (とばいん) ・その寵姫(ちょうき)美福 門院 (びふくもんいん)に下河辺庄を寄進 (きしん) し、年貢を納めつつ、荘園の実質的管理を 行っていました。 その後鳥羽院・美福門院の娘八条院に、建保 6 年(1216)以前には一度八条院の養子藤 原良輔 (ふじわらのよしすけ)に譲られましたが、その後皇室領に復したようです。実質的支 配は下河辺氏が続けていたと思われます。 しかし、文永 12 年(1275)4 月 27 日には、庄内の河妻(五霞町)・前林(古河市)を金沢 北条実時 (さねとき)が夫人に譲っているので、鎌倉中期には北条氏領となっていたようで す。さらに、実時は庄内の多くの土地を自らが建立した鎌倉称名寺 (しょうみょうじ)の寺領 としております。 そして戦国時代、古河公方足利成氏 (こがくぼうあしかがしげうじ)の家臣領となっています。 下河辺庄は周りの河川により肥沃 (ひよく)な土が運ばれ、比較的生産能力は高かったの ですが、洪水の多い土地でもありました。領主は農民たちを使って灌漑施設 (かんがいしせ つ) ・堤防をつくり生産力の向上を図ります。農民は洪水による生産力の低下と領主に課 せられた土木工事による疲弊に苦しい生活を強いられました。鎌倉後期から南北朝時代に は領主金沢北条氏・称名寺と農民との年貢減免をめぐる闘争と疲弊に苦しむ農民の姿をみ ることができます。 ＜詳しくは＞ ＊古河市史編さん委員会編 1988『古河市史 通史編』 ＊三郷市史編さん委員会編 1995『三郷市史 通史編Ⅰ』 ＊幸手市教育委員会生涯学習課市史編さん室編 2002『幸手市史 通史編Ⅰ』 下河辺庄の庄域の推定図 下河辺庄の庄域の推定図 金沢文庫文書など中世の古文書に記載のある地名（◇印）から推定した庄域。 金沢文庫文書など中世の古文書に記載のある地名（◇印）から推定した庄域。 ※『古河市史 ※『古河市史 通史編』の「２－２図 通史編』の「２－２図 下河辺荘の荘域」を参照して作成した。 下河辺荘の荘域」を参照して作成した。 下 野 国 ◇上大野 古河 宮 ◇ 下大野 戸 川 籏井◇ 前林 ◇ ◇水海 ◇川妻 ◇高柳 大