Cell biology of Amoeba proteus - 日本原生生物学会.PDFVIP

Jpn. J. Protozool. Vol. 37, No. 2. (2004) 159 Review Amoeba proteus の細胞生物学 * 園部誠司 、西原絵里 兵庫県立大学大学院生命理学研究科 兵庫県赤穂郡 上郡町光都３－２－ １ Cell biology of Amoeba proteus Seiji SONOBE and Eri NISHIHARA University of Hyogo, Graduate School of Life Science, Harima Science Park City, Hyogo, 678-1297 はじめに 学的研究には単核で大きさ 0.5 mm ほどの Amoeba proteus や 多核で 2 mm に達する Chaos 類が、生化学的 Amoeba proteus は原生動物根足虫類に分類される単 研究には Acanthamoeba がよく用いられています。本 核単細胞で、細胞膜の一部を伸張させた仮足を出しな 稿では主として Amoeba proteus を材料としたものを がら基質上を這うという、いわゆるアメーバ運動をお 紹介します （アメーバと日本語表記してあるものはす こないます。繊毛鞭毛や眼点などの特殊化した器官を べて Amoeba proteus を指すとお考えください）。なお、 まったく持ちません。光学顕微鏡で観察すると細胞内 アメーバの分類、生態などについては石井圭一先生が には核と収縮胞、大小、丸四角などさまざまな形状の 著され、堀上英紀先生と木原章先生により出版された 顆粒がみられるだけであり、細胞表面にも特殊化した アメーバ図鑑（1999、金原出版）というアメーバ研究 構造は見られません (Fig. 1)。このようにアメーバは一 者にとってはバイブルとも言える著作がありますの 見非常に単純な形態、ある意味では乱雑に細胞膜の袋 でそちらを参考にしていただきたいと思います。ま の中に細胞小器官が詰め込まれた細胞であるといえ た、International Review of Cytology の編集者を長く ますが、これがえさに向かって仮足を伸ばし、えさを やっておられる K. W. Jeon 博士はアメーバ屋さんで、 取り込み消化するためには、光学顕微鏡では見えない 走性や共生について研究しておられます (Jeon 1995)。 厳密な制御機構が存在するはずです。私はアメーバ細 最近アメーバ運動というと、動物培養細胞や細胞 胞内で構築されているこの制御機構を知り、アメーバ 性粘菌、また特に解析が進んだ魚の鱗をつくるケラト という細胞のすべてを知りたいと思っています。しか サイトに研究の中心がありますが (Pantaloni et al し、実際の研究はある限られた現象に集中してしまい 2001)、これらの運動速度はアメーバの１/10 程度であ ます。この総説ではアメーバに関する細胞生物学的研 り、したがって運動機構も異なるのではないかと思っ 究の全般、特に運動、収縮胞、核についてのこれまで て い ま す。い ず れ に し て も 本 家 ア メ ー バ 運 動 の の研究を紹介したいと思います。なお、アメーバには Amoeba proteus にがんばってもらわなければと思って 非常に多くの種が同定されています。そのうち、生理 います。 *Corresponding author アメーバ運動 Tel: +81-791-58-0176 Fax: +81-791-68-0