障害の社会学的考察―障害学における障害概念の.docVIP

PAGE 104 障害の社会学的考察 ―障害学における社会モデルの再構築― 2009年　修士論文 横浜市立国際総合科学研究科?博士前期課程? 国際文化研究専攻?まちづくりコース　075033　片川祥吾 目次 はじめに／用語について／凡例3 障害学の誕生とその論理の展開5　　　　　　　　　　　　 障害学の形成―イギリス障害学6 障害学の輸入―日本における障害学の展開17 社会モデルの意義23 専門家主義的医学モデル批判としての社会モデル24 社会モデルの比較検討29 障害の新たな理解に向けて40 文化モデルの検討―障害は文化に転化できるか40 「障害」と「障害者」の考察49 「障害をもって生きる」とは何か―介助の議論61 インペアメントとディスアビリティの再構築74 インペアメントの再定義74 ディスアビリティの再定義78 障害学の課題と可能性92 障害学の目指すもの93 日本の障害学の課題96 おわりに99 謝辞100 引用文献／参考文献100 はじめに 小論で扱うのはイギリスで1970年代に形づくられた「障害学（Disability Studies）」である。障害学では、イギリスの障害者運動団体に起源をもつ「障害の社会モデル（Social Model of Disability）」（以下、社会モデル）がヴィク?フィンケルシュタイン（以下、フィンケルシュタイン）やマイケル?オリバー（以下、オリバー）といった研究者の手によって取り入れられ、障害学の中心的なパラダイムとして社会モデルは存在している。社会モデルは、従来の「障害」に対するアプローチである「医学（療）モデル（Medical Model） 医学モデルについては必ずしもDisability Studiesのみで言われているのではない。『社会福祉辞典』によれば医学モデルとは、「西洋近代医学の基本的な枠組みであり、クライエントの抱えている困難の原因を個人に帰着させ、その原因を正常からの逸脱、以上、病理として捉え、それを正常に回復させることにより、問題の解決を図るという方法をとる」ものである（秋元ほか編、2003：9頁）。」〔＝個人モデル〕に批判するために生み出されたものである。社会モデルにおいて、日本語の障害の意味に近い概念である「インペアメント」と、社会が障害者の存在を考慮しないために障害者 障害者基本法によれば、「障害者とは身体障害、知的障害又は精神障害があるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう。」（ミネルヴァ書房編集部編、2007：701頁）が負っている不利益や活動の制約である「ディスアビリティ」とが明確に区別され、ディスアビリティの解消がその主な課題とされた。一方で、社会モデルは、90年代に障害学内の主にフェミニズムの影響を受けたジェニー?モリス（以下、モリス）やリズ?クロー（以下、クロー） 医学モデルについては必ずしもDisability Studiesのみで言われているのではない。『社会福祉辞典』によれば医学モデルとは、「西洋近代医学の基本的な枠組みであり、クライエントの抱えている困難の原因を個人に帰着させ、その原因を正常からの逸脱、以上、病理として捉え、それを正常に回復させることにより、問題の解決を図るという方法をとる」ものである（秋元ほか編、2003：9頁）。 障害者基本法によれば、「障害者とは身体障害、知的障害又は精神障害があるため、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう。」（ミネルヴァ書房編集部編、2007：701頁） こうした社会モデル批判に示唆を受け、障害を社会学的に考察?検討し、新たなインペアメント?ディスアビリティの定義を示すことが小論の目的である。そのことで、新たな障害者と障害の問題を理解するための視角や、障害学が社会モデル批判を乗り越え障害者の置かれている現実をより反映した学問へと発展していくための手がかりを明示したい。そこでは、進行性筋ジストロフィー 『社会福祉辞典』によれば、「遺伝性の筋疾患の代表的なものである。発症年齢や病状によってさまざまなタイプに分けられている。原因はまだ十分に解明されていない。主症状は筋力低下、筋萎縮である。」と説明されている（秋元ほか編、2003：254頁）。という障害をもつ障害者としての 『社会福祉辞典』によれば、「遺伝性の筋疾患の代表的なものである。発症年齢や病状によってさまざまなタイプに分けられている。原因はまだ十分に解明されていない。主症状は筋力低下、筋萎縮である。」と説明されている（秋元ほか編、2003：254頁）。 　小論の流れとしては次のようである。序章である第一章では、障害学における先行研究の把握のために、一節では障害学生誕の地であるイ