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血液内科医?皮膚科医のための統合ATL 診療ガイドライン解説書案 2014 1. はじめに 1.1 血液内科と皮膚科のATL 診療ガイドラインを踏まえて作成された本解説書 案の目的と使い方 ATL 診療ガイドラインは、血液内科と皮膚科の専門医向けにそれぞれ日本血液学会と日 本皮膚科学会?日本皮膚悪性腫瘍学会で編集された①②③。その背景としては、1980 年代の 全国調査ではATL 患者の49%が皮膚病変を有し、今まで急性型やリンパ腫型など全身性に 浸潤した ATL に対しては主に血液内科医が診療を行い、一方病変が皮膚に限局する ATL に対しては光線療法などの局所療法を主に皮膚科医が診療を行ってきた実態がある④。 この両科のATL 診療ガイドラインに従い、全国で等しく ATL の診療が行われることが 理想である。しかし日本全国でのATL 診療の均てん化を目指すとき、他の腫瘍に比べ本疾 患は地域偏在性が著しく、加えて血液内科医と皮膚科医が連携してあるいは別々に個々の 患者の診療にあたることがあるため、困難を感じざるをえない。すなわち専門医や医療機 関の偏在等の問題があり、上記の両科ごとの診療ガイドラインのみでは不十分なケースが 考えられる。具体的には、HTLV-1 キャリアが多く、ATL の症例数も多い九州地区の離島 などで、血液内科医や皮膚科医以外の一般医師がATL を診療しなければならない場合が想 定される。血液内科医がATL の皮膚病変を診療しなければならない場合、逆に、皮膚科医 が急性型、リンパ腫型や慢性型など、皮膚以外の病変を伴ったATL を診療しなければなら ない場合も想定される。さらには、ATL の十分な診療経験がない血液内科医/皮膚科医が ATL 患者の診療にあたらなければならない場合もこれに当てはまるであろう。このような、 両科の診療ガイドラインでは充足しない側面を補うことを目的に、血液内科医?皮膚科医 のための統合ATL 診療ガイドライン解説書案として本書を作成した。 今回、厚生労働科学研究費補助金（H23-がん臨床-一般-022）「ATL の診療実態?指針の 分析による診療体制の整備」班で、皮膚病変を有するATL についての診療?研究のコンセ ンサスを論文化したこと⑤を踏まえ、両科に共通する部分の診療ガイドラインについて、 それぞれのガイドライン作成に関わっている分担研究者を中心に、その解説書案を作成し た。血液内科医、皮膚科医がそれぞれ自らの診療科向けに作られた診療ガイドラインを参 考にするのは当然のことであるが、双方向性に、血液内科医が皮膚科の、そして皮膚科医 が血液内科のガイドラインを参考にして、お互いの科でATL に対してどのような診療が行 われているかを全国で等しく知ることができるようにも、この解説書案を活用していただ ければ幸いである。 皮膚病変を有するATL の診療の基本はもちろん血液内科?皮膚科の各診療ガイドライン 1 であることは言うまでもないが、ガイドラインを成書に例えれば、それらを紐解く際の参 考資料として、この解説書案を活用していただければ幸いである。。 ATL の病態 ?病型によって主に診療を担当する診療科は当然異なるが、両診療科が設置 されている医療機関では、皮膚病変を有するATL 患者の診療に際しては、原則として両診 療科が併診すべきである。その際、それぞれの科の医師が他科のガイドラインを参照する にあたっても、この解説書案を活用していただければ幸いである。 2. Clinical Question 2.1. 両科の役割分担 ここでは皮膚病変を有するATL 患者を診療する際の、血液内科医と皮膚科医の役割分担 について述べる。内容は血液内科医と皮膚科医が連携して診療を進められる医療環境を念 頭に述べたものであり、どちらかが不在、あるいは両者とも不在の場合はそれ以外の医師 が担当することもあり得る。 皮膚病変を有する ATL 患者を診療する際には、まず下山分類によってATL の病型を確 定する③。このための作業は血液内科の協力が得られる環境であれば、リンパ節生検 （外 科へ依頼）など適宜必要な全身の精査を血液内科が主体で診断を進める。頭頸部から骨盤 部までの CT またはPET/CT と上部消化管内視鏡検査は、病型診断に有用である。皮膚病 変がATL の病変であることを確認するた