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法学入門 第3講　法の理念(目的) 法の理念あるいは目的というのは、法は何のために存在するか、法はなぜ存在するのか、という問題である。言い換えれば、法の理念は法の根源に存在しながら正しい法(正法)とそうでない法(悪法)とを判断できる究極的な基準になり、法の形成や実現の指導原理になるもの、つまり法の存在根拠を言う。法の概念が外形的な問題であるならば、法の理念はその根源に関する内容的の問題であるといえる。法は盲目的に存在することではなく、何かの理念と価値を実現するために存在するのである。ですから、法の理念ないし目的を探究するのは、法の生命を知らせるのである、といえよう。法の理念として挙げられるのは、正義、合目的性、法的安定性の三つである。 一　正義　 法と正義とは、古くから不可分の関係にあると考えられてきた。それですべての法に共通する理念として、正義を提示するのには異説がない。すなわち、法が正義を実現することをその中心的な目的としていることは、否定されない。 伝統的に正義というのは、「人間の人間に対する正当な関係」、または「それぞれに自分の分を持たせること」と言う。つまり、正義とは、人間と社会との関係において理想的な状態として人間が追求しなければならない価値基準であるといえる。実定法が国家権力によって作られ、その権力によって強制されるのであるからこそ、正義は重要な意味を持つ。もし正義を法の目的から除いてしまったら、そこには実力の支配だけが残ることになって、法としての妥当性を主張することができなくなるはずであろう。 1　Platonの正義論 Platonは、正義を人間の理性から発見しようとした。彼は、徳を知恵、勇気、節制、正義の四つに分けて、知恵は哲人階級の徳であり、勇気は武士階級の徳であり、節制は生産階級が持たなければならない徳であると見、理性と勇気と節制の部分徳目が調和になる時、成り立つ綜合徳目が正義にほかならないといった。彼は正義の本質とは、共同生活で分別を守ることであると言った。 つまり、正義とは、各階層間の正当な関係であり、これを守ることによって理性が支配し、それぞれの職分を尽くし下層階級も理性の指揮に追わせるようにしようとすることである、という。彼は正義こそ最高の徳といい、「自分の本分通りに」、「自分自身のことを行いなさい」という、命題を提示した。しかし、このようなPlatonの正義論は、現代的な意味での正義の概念とは距離がある。つまり今日においての正義論はそんな徳としての正義ではなく社会行動や社会秩序構成の客観的な基準としての正義であるといえる。 2　Aristotelesの正義論 Platonの弟子であるAristotelesは、正義を人が遵守しなければならない最高の徳であると同時に、正義は、単純な個人の徳でなくて、個人が他人との関係の中で実現しなければならない社会的な徳であると考えた。 Aristotelesは正義を広義と狭義の二つに分けた。広義においての正義は「一般的正義」として、人間の心情及び行動を共同生活の一般原則に適合させるのであると言った。狭義においての正義は、法の具体的な原理によって各人の物質上及び精神上の利害を平等にすることであるとし、平等を特殊的正義と見た。 この特殊的正義は平均的正義と配分的正義と分けられる。 平均的正義であるというのは、絶対的平等として人間は人間として等しい価値を持っているのだから平等に扱われなければならないという形式的平等の原理である。それは、既得権の尊重、権利侵害の禁止などとして現れ、一般的に私法の正義として現れる。絶対的平等の例えをみると、売買における等価の原則、土地収用における正当な報償、損害報償額における等価原則などである。特に選挙権、国民投票権、被選挙権における平等は絶対的平等を要求する。 配分的正義は、比例的平等を意味する。　これは、公法における平等であるといえる。賃金支払いの場合に出来高給成果給によるとか、勲章の場合には個人の功績によるなどがこれに該当する。配分的正義の基準には特定の尺度がない。各自に自分のものを与えるために特殊意思や恣意を排除して公平無私に人間関係を規律することが、配分的正義の要請である。 歴史的に見れば封建時代の身分制の社会は、配分的正義が支配したが、市民法原理に立脚した市民社会は、平均的正義が支配した社会であった。ところが、独占資本主義の段階にはいっては、独占、権利の濫用、公害などがだんだん増加することによって、市民法原理を修正する理念としてまた配分的正義が登場することになった。 このようなAristotelesの正義論は、個人主義と団体主義の両面を配慮し、その調和を図ったこととして、