人工衛星観測雨量を利用した洪水予測システム.pdfVIP

人工衛星観測雨量を利用した洪水予測システム (IFAS)の開発 1 1 1 1 1 杉浦 友宣 ・馬籠 純 ・川上 貴宏 ・小澤 剛 ・深見 和彦 1 ( ) ICHARM 305-8516 1-6 . 独 土木研究所 水文チーム （〒 茨城県つくば市南原 ） ( ) (ICHARM) 独 土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター 水文チームでは，地上水 文情報が十分に確保できない発展途上国等の河川流域においても効率的に洪水予警報システム の構築が可能となるよう，入力データとして人工衛星によって観測された雨量情報を活用する GIS とともに，グローバル データを利用した流出解析モデル作成機能を有する基盤的な洪水予 測システム(Integrated Flood Analysis System) を民間企業等との共同研究により開発した．開発に あたり，人工衛星によって観測された雨量情報は，一般的に地上観測雨量に比べて過小評価の 傾向があるため，新たに補正手法の開発・実装を行っている．今後，衛星観測雨量の補正手法 の精度検証・向上は必要であるものの，本システムは水文情報が乏しい地域における洪水予警 報システムの構築に有効であると考えられる．本報では，これまでの開発の概要と普及活動に ついて紹介する． キーワード 人工衛星観測雨量，流出解析，洪水予測，分布型流出解析モデル，GIS 用したパラメータ推定機能を含むモデル作成機能，分布 1. はじめに 型流出解析モデルによる流出解析エンジン，結果表示機 能を装備しており，このシステムにより洪水予報の発令 水関連災害は，人類の持続可能な開発，貧困の削減に に必要な一連の流出計算が可能となる． 向け克服すべき課題の一つで，近年，人口増加，資産の 本報では，IFASの開発経緯と主な特徴および機能， 集中・高度化に伴い被害・影響が増加している．河川整 計算結果等について紹介を行う． 備が十分ではない諸国においては，人的被害軽減の観点 から，災害時における住民避難等の行動が確実に行われ 2. IFASのシステム概要 ることが重要であり，このためには，ハザードマップ等 による危険性の周知や，洪水予警報の発令による避難の 有無の判断が必要となる．しかしこれらの国々では，費 (1) 開発コンセプト 用的な問題や降雨情報の不足等の理由により，洪水予警 IFASの開発コンセプトを以下に，IFASの基本構成を -1 報システムの整備が必ずしも十分に進んでいない状況に 図 に示す． ( ) ある．また国際河川の流域では，上流地域に位置する他 ① 地上水文情報 雨量 が乏しい地域においても洪水予 国の水文データが得られないために，適切に洪水予警報 測が可能となるように，入力データとして地上観測 システムの構築ができないといったケースもみられる． 雨量だけでなく衛星観測雨量を取り込むイン