気象谈话室-日本気象学会.PDF

気象談話室 202（中谷ダイヤグラム） 中谷ダイヤグラムと拡散式人工雪作成法の問題＊ 対馬勝年＊＊ 　1．雪結晶の分類 』『、　　　　　名 　積雪寒冷地で身近に見られる雪の結晶は形の美し 毒 さ，繊細さ，見事な対称性において多くの人々を魅了 ．1 してきました．天空から舞い降りる無数の結晶，雪の 妖精は千差万別であり，どれとして同一の結晶はない 角板 　広幅六花 扁形 と言われます．しかし，そのような雪結晶の類似性に ／　夢 注目して，中谷宇吉郎は針状結晶，角柱状結晶，板状 　毒 結晶，角柱・板状組み合わせ結晶，側面結晶，雲粒付 結晶，不定形の7種類に大分類し，さらに板状を正規 六花結晶，十二花結晶，奇形結晶などに細分した18種 類の中分類正規六花結晶を角板，扇型，星状，樹枝 　　星歌 星荘 樹枝讐六花 などのように細分した41種の分類図表を作りました． 第1図各種の雪の結晶（小林著，1983：冬のエ フェメラルより引用）． 　大分類は主に温度によって決まり，小分類は水分量 も関係した分類であるといえます． 　さて，雪の結晶形がなぜ第1図のように異なるので 蒸気を補給された空気は軽くなって内管を上昇しま しょうか．結晶は雲の中で形成されるのですから，雲 す．水面から離れるにつれ冷え，水飽和の条件では雲 の温度や雲の濃淡（含水量）などに関係するに違いあ 粒を含む状態となります．水蒸気と過冷却水滴を含む りません．そのような洞察から世界で最初に人工雪の 環境（雲）が成長空間に形成され，ウサギの毛に雪の 実験に取り組んだのが有名な中谷博士です． 結晶が成長していきます．装置は低温実験室の中にあ り，外筒の空気は冷えて下降するため，空気の循環（対 　2．中谷の人工雪作成法 流）が生じます．天然の雲発生の様子を巧みに取り入 　中谷は天然の雪結晶形成の状態を模倣して第2図に れた装置であり，対流法と呼ばれます． 示す自然対流型の装置を考案し，人工雪を作成しまし 　ウサギの毛に発生する結晶形は成長部付近の気温と た．この実験結果から，温度と全含水量によって雪の 水温によって変わりました．水温を高くすると，水分 結晶形を分類した中谷ダイヤグラムは国際的に有名に 量の補給が多くなり，より複雑な結晶形に変わってい なりました． きました．中谷は結晶の周りから採取した空気を五酸 　中谷の人工雪実験装置は水分供給源二重管（上昇 化燐の筒に通し，質量の増加を計測しました．単位体 と下降），結晶成長空間の三部分から構成されます．水 積当たりの水分量が決定され，第3図の縦軸が導かれ ました．図の縦軸は測定された水分量を氷飽和水蒸気