田村笃志助教由井伸彦教授-东京医科歯科大学.PDFVIP

プレス通知資料 （研究成果） 報道関係各位 平成２９年１２月４日 国立大学法人 東京医科歯科大学 「超分子構造ポリマーを利用したライソゾーム病治療薬の開発」 ―安全性・治療効果に優れるニーマンピック病C型治療薬として臨床応用に期待― 【ポイント】  厚生労働省指定難病として指定されているライソゾーム病の一種であるニーマンピック病C 型（NPC 病）は、細胞内にコレステロールの蓄積を生じる遺伝性疾患であり、有効な治療法の開発が求めら れています。  細胞内環境で解離し、β-シクロデキストリンを細胞内局所に放出することで過剰なコレステロールの 排泄を促進する細胞内分解性ポリロタキサンを開発し、NPC 病に対する治療効果を動物実験で評 価しました。  ポリロタキサンは現在臨床試験が行われている β-シクロデキストリンよりも低濃度でコレステロール の組織内蓄積を抑制し、治療効果を示すことを明らかにしました。  本化合物は、従来に比べて安全性と治療効果の両面で優れることから、NPC 病治療に貢献するこ とが期待されます。 東京医科歯科大学生体材料工学研究所有機生体材料学分野の田村篤志助教、由井伸彦教授らの研究グ ループは、ニーマンピック病 C 型（NPC 病）に対する治療薬として超分子ポリロタキサンを開発し、現在海外で 臨床試験が実施されている 2-ヒドロキシプロピル β-シクロデキストリンと比べて治療効果に優れることを動物 実験で明らかにしました。この研究は文部科学省科学研究費補助金（若手研究（B）、若手研究 （A）（16H05910）、新学術領域研究「ナノメディシン分子科学」）、持田記念医学薬学振興財団なら びに科学技術振興機構（JST）研究成果最適展開支援プログラム（A-STEP）の支援のもとでおこなわれたもの で、その研究成果は、国際科学誌Journal of Controlled Release に、2017 年11 月11 日オンライン版で発表さ れました。 1 図１．細胞内ポリロタキサンの構造と分解挙動の模式図 【研究の背景】 ライソゾーム（リソソーム）病の一種であるニーマンピック病C 型（NPC 病）は細胞内のコレステロール輸送に 関わるNPC1 の先天的な遺伝子変異によって生じる疾患であり、細胞内に過剰なコレステロールを蓄積します。 NPC 病の発症頻度は 10 万人に1 人とされており、新生児期から幼児期より臓器の肥大化や神経後退を示す 重篤な疾患です。本疾患に対する有効な治療法は長い間確立されておりませんでしたが、近年、環状のオリゴ 糖である 2-ヒドロキシプロピル β-シクロデキストリン（HP- β-CD）がコレステロールの蓄積を減少させ、治療効 果に繋がることが明らかにされ、現在世界各国で臨床試験が進められています。NPC 病治療薬として HP- β-CD は非常に期待度が高いといえますが、高濃度での投与、あるいは脊椎への局所投与が必要であり 副作用も懸念されています。 HP- β-CD の問題点として、低分子量であるため投与後速やかに腎排泄される点、疎水性の空洞部が細胞膜 に作用し傷害性（副作用）を示す点などが挙げられます。本研究では、これらの問題を解決するための方法と して β-シクロデキストリンの空洞部に線状高分子が貫通した超分子「ポリロタキサン」の利用を考案し、この構 造が細胞内で解離して β-シクロデキストリンを溶出する設計を行いました（図１）。これまでの研究で、細胞内 分解性ポリロタキサンの数珠状構造により HP- β-CD の問題点である傷害性が低減されること、ならびに細胞 内でのポリロタキサンの分解が培養細胞モデルにおいて優れたコレステロール排泄効果を示すことを明らかに しています。しかし、ポリロタキサンのモデル動物に対する治療効果は未解明のままでした。 【研究成果の概要】 細胞内分解性ポリロタキサンをNPC 病治療薬として臨床応用するための基礎的研究として、NPC 病モデ