博士论文要旨.PDFVIP

博 士 論 文 要 旨 学籍番号 08D010 氏 名 冨 安 眞 理 研究指導教員 川 村 佐 和 子 教授 論文題目 高齢パーキンソン病療養者の摂食 ・嚥下障がい支援を行う家族介護者の生活課題に関する研究 Ⅰ．研究の背景 平成18年以降、医療制度改革の推進に伴い、入院は急性期の短期間に限られ、医療を必要としながら 在宅療養生活を送る高齢者が増えている。療養者に医療的管理を必要とする状態になると、多くの家族介 護者は在宅での生活困難に遭遇し、在宅療養継続はいっそう困難になることが報告されている。高齢者に 多いパーキンソン病療養者のQOLに関する研究は、 近年行われるようになっているが、家族の介護や生活 の課題については、研究が少ない現状である。そこで、医療ニーズをもつ高齢者として、神経難病である パーキンソン病療養者を選定し、介護者である家族を研究対象者とした。 Ⅱ．研究目的 本研究においては、高齢パーキンソン病療養者の摂食 ・嚥下障がい支援を行っている家族介護者の生活 実態を調査し、生活課題を探求する。 Ⅲ．研究方法 １．研究デザイン 研究デザインとして質的記述的研究法を用いた。その理由は、高齢パーキンソン病療養者の摂食 ・嚥下 障がい支援を行っている家族介護者の生活実態を調査することにより、家族介護者自身の健全な生活の遂 行過程において、生活の中に生じる生活課題を探求することを目的としたためである。 ２． 調査方法 1) 研究対象者 摂食 ・嚥下障がいがあるが、経口によって食事摂取ができる自宅療養中のパーキンソン病高齢者(ヤー ルⅢ以上、60歳以上）の家族介護者で、同意を得られた者とした。 2) データ収集および分析方法 (1) 面接調査 面接内容は、録音の同意が得られた場合には、ICレコーダーに録音し、逐語録とした。逐語録を 作成後、介護実態および摂食 ・嚥下障がい支援に関して、意味ある文節に分け分類整理し、カテゴ リー化した。分析過程における厳密性の検討には、４つの基準 （Lincoln Guba、1985）を用い た。 (2) 質問紙調査 得られたデータを分析する上で、高齢パーキンソン病療養者 ・家族介護者基礎情報が必要とな る。なお、家族介護者基礎情報には、介護者の負担感を測定するJ-ZBI_8 （荒井由美子他、2003)、 家族介護者の健康関連QOLを測定するSF-36v2 （福原俊一他、2005)の尺度項目を取り入れ、その得点 について、記述統計的に分析を行った。 (3) 昼食支援時間調査 観察記録票を用いて、家族介護者が行っている昼食に関する支援の開始 ・終了時間について、観 察 ・記録を行った。面接調査結果から作成した摂食 ・嚥下障がい支援分類用いて、家族が行った昼 食支援時間を分類整理し、パターンの共通性を検討した。 Ⅳ．結果及び考察 １．対象者の概要 家族介護者は、男性5名、女性10名であり、平均年齢64.4±11.2歳(範囲38歳～81歳) 、 平均介護 年数は9.0±5.57年であった。データ収集期間は2010年3月から5月であった。高齢パーキンソン病療養 者は、男性10名、女性5名であり、平均年齢68.9±6.2歳 （範囲61歳～80歳）、であった。 ２．家族介護者の生活実態と生活課題 質問紙調査であるZarit介護負担尺度短縮版の平均得点は、13.73±4.16点であった。また、SF-36v2の 下位尺度平均得点について、2007年国民標準値(60代)の値と比較すると、身体機能 45.8点、全体的健康 感48.2点は、ほぼ同様の結果を示した。しかしながら、日常役割機能 （身体）や 36.4点、活力42.1点、 心の健康41.8点は、低い値を示した。昼食支援時間調査における、昼食支援時間は、157.7±45.2分で あり、昼食摂取時間は、25.3±17.0分であった。家族介護者による摂食 ・嚥下障がい支援の特徴は、各項 目に所要時間がかかり、時間の範囲が広く療養者の個別性がケアに反映され、家族介護者の負担増加の実 態が示された。面接調査のデータ分析から、高齢パーキンソン病療養者の健康問題は、7領域に分類 ・整 理された。また、家族介護者による摂食 ・嚥下障がい支援は、【食事を安全に支援する】【環境を整備