リポート-みずほ総合研究所.PDF

リポート 2003 年2 月10 日発行 ロシアの原油生産・輸出動向 本誌に関するお問い合わせは みずほ総合研究所株式会社 調査本部 電話（03）3201-0523 まで。 要旨 １．1990 年代前半に大きく減少したロシアの原油生産量は、99 年以降、着実な増産基調に 転じており、単独国としては世界第２位の米国に迫る勢いを見せている。また、原油の 輸出量も 96 年以降、着実に増加しており、2002 年中には月次ベースでサウジアラビア を抜いて世界第１位となる局面も出てきた。 ２．こうしたロシアの原油生産・輸出増加の背景としては、以下のような要因が考えられ る。まず、生産量増加の要因としては、ロシアの石油企業による上流 （原油採掘）部門 への設備投資、とくに採油増進 （EOR: Enhanced Oil Pecovery）技術の導入への投資が増 大したことが大きい。一方、輸出量の増加は、政府による原油輸出制限の緩和によると ころが大きいと考えられる。 ３．ただし、ロシアが今後も引き続き原油生産・輸出の増加を図っていく上で、２つの深 刻な懸念材料が明らかとなってきた。懸念材料の１つは、油田の小規模化や深化、回収 物の含水率上昇など、資源基盤の悪化が進行していることである。この問題は、更なる EOR 技術の導入や、新規油田の開発によって克服することが可能であるが、そのため には当然、投資資金が必要となる。もう１つの懸念材料は、原油の輸送能力が限界に近 付きつつあるという問題である。この問題の克服に向けて、現在、国営パイプライン会 社であるトランスネフチや複数の民間石油企業が様々なパイプライン ・プロジェクトを 推進しているが、この過程でもまた投資資金の確保が重要な課題となっている。そして 今後、これらの資金確保の成否を左右するのは、原油国際価格の動向と、外国投資誘致 の成否であると考えられる。 ４．ロシアのエネルギー省が2002 年 10 月に策定した「2020 年までのロシア・エネルギー 戦略の基本規定」では、今後の原油生産 ・輸出量に関する見通しとして、 「楽観シナリ オ」と「慎重シナリオ」の２つが提示されており、前者では 2010 年までの生産・輸出 量の急速な増加が、後者では緩やかな増加が見込まれている。ただし、 「楽観シナリオ」 では、前提とされる原油国際価格が過大に評価されている可能性が高いこと等から、今 後、 「楽観シナリオ」の実現は難しく、 「慎重シナリオ」がより現実的と見るのが妥当 である。 （みずほ総合研究所主任研究員 金野雄五） 目次 １．はじめに･･････････････････････････････････････････････････････････････････1 ２．最近の原油生産・輸出動向とその背景････････････････････････････････････････1 （１）原油生産・輸出動向･･･････････････････････････････････････････････････････1 （２）最近の生産・輸出増を支える要因･･･････････････････････････････････････････3 ３．明らかになってきた懸念材料････････････････････････････････････････････････5 （１）資源基盤の悪化･･･････････････････････････････････････････････････････････5 （２）輸出能力の限界･･･････････････････････････････････････････････････････････6 ４．今後の展望と課題･･････････････････････････････････････････････････････････8