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安楽死を法律化すべきか 心理臨床学科 1 年 1101042 木佐貫育歩 1. はじめに わが国では、現在、嘱託殺人1や介護殺人などの事件が問題になっている。これまで、い くつかの安楽死事件の裁判では、安楽死容認の要件が出されてきた。しかし、被告人に無 罪判決が出た例はない。このような事件の中には、安楽死法があれば防ぐことができたも のもあるのではないだろうか。 このレポートでは、介護・終末期医療の現状と国民の意識を明らかにし、安楽死の問題 点の改善策を提示し、安楽死を法律化することを提案する。 2. 介護と終末期医療の現状 厚生労働省の「平成 22 年国民生活基礎調査の概況」によると、主な介護者と被介護者 の関係は、64.1 ％が同居である。また、その介護時間は被介護者の身体状況によって異な る。部分的な手助けや軽度の介護が必要な場合は、「必要な時に手をかす程度」というのが 多い。しかし、重度の介護を必要とする場合、多くの介護者は「ほとんど終日」介護を行 っている。 さらに、介護を家族や親戚等で分担することは実際には難しく、一人に負担がかかって しまうことも多いといわれる。同居の主な介護者でストレスや悩みを抱えている人は少な くない。そのストレスや悩みの原因で男女ともに最も多いのが、「家族の病気や介護」であ った。 一方、在宅サービスや施設サービス等の介護サービスを利用している人もいる。また、 ホスピスや重度の障害児のための施設の数も増加傾向にある。 3. 国民の終末医療に関する意識 平成 20 年 3 月の、厚生労働省の「終末期医療に関する調査」では、死期が迫っている 患者に対する医療のあり方に関する問いがあった。ここでは、自分の病が治る見込みがな 2 3 く死が迫っている場合、消極的安楽死 や間接的安楽死 を求める回答が多かった。 それから、平成 23 年の厚生労働省「医療に関する国民意識調査」によると、事前の意 思確認書を既に作成している人は、わずか 2 ％であった。しかし、61 ％の人は、今後作成 1 したいと考えていることが分かった。 出典：厚生労働省「医療に関する国民意識調査」 4. 安楽死の問題点 安楽死に関して考えられる問題点が３つある。 １つは、安楽死を行うかどうかの判断の難しさである。安楽死の要件には、患者が死を 避けられない末期状態にあること。また、耐え難い肉体的苦痛に苦しんでいること等が挙 げられている。ところが、最近は医療が進歩し、末期状態にあった患者が回復したという 例もある。苦痛を大幅に抑えることはある程度可能であるが、そもそも苦痛は主観的なも のであるため、耐え難いかどうかの判断は難しい。 ２つ目は、殺人や自殺幇助4 等との線引きの難しさである。安楽死法を利用した、本人の 意思に反する殺人の横行が心配される。さらに、自殺幇助との線引きが曖昧になると、自 殺者が増加する危険性もある。 ３つ目は、精神的苦痛を理由とする安楽死を認めるかという問題である。１つ目に述べ た問題と同様に、精神的苦痛も主観的なものであるため、他人には判断し難い。また、２ つ目の問題のように自殺の容認につながりかねない。 5. 改善案 問題点を解決するために、必要な事がいくつかある。 安楽死の判断の問題では、本人の意思を尊重させるために、事前の意思確認書の作成を 進めることが重要である。また、文書は「事前意思」でなければならないため、定期的に 更新する必要がある。 2 殺人や自殺幇助等との線引きの問題の改善案は、厳しく細かい規則を作ることである。 安楽死と殺人・自殺幇助を区別するには、患者が死亡する前や死亡した時の状況を明確に 表す必要がある。安楽死をするにあたっての詳細を記す報告書の提出や、その他の調査を 義務化すべきである。 精神的苦痛を理由とする安楽死の問題については、主治医と患者の面談や精神科医の診 断が必要である。それは、精神的苦痛は一時的なものである場合や治療可能な場合も