どうする肝酵素上昇！内科医の考える肝生検のタイミング.pdfVIP

特別セミナー5 どうする肝酵素上昇？！内科医の考える肝生検のタイミング 坂 井　学 1) Manabu SAKAI 協賛：株式会社 AVS 日本小動物内視鏡推進連絡会 は　じ　め　に るうえで重要な項目である。近年、総胆汁酸濃度測 定はルーチンな検査となったが、総胆汁酸濃度の上 　動物の症状の有無に関わらず、日々の診療で肝酵 昇が必ずしも先天性門脈シャントの症例でのみ認め 素値が上昇した動物に遭遇することは少なくない。 られる所見ではなく、胆道系や肝実質に病変がある そのような動物に対して肝生検はすべて適応なのだ 症例でもしばしば高値を呈することは言うまでもな ろうか？また、いつ肝生検を奨めるべきなのだろう い。総胆汁酸の軽度から中程度の上昇の症例では必 か？治療ではなく検査のための「開腹」は飼い主に ず腹部超音波検査でシャントの有無を評価すべきで とって非常に辛い検査の選択となる。また、獣医師 ある。肝臓病以外にも膵炎、内分泌疾患（副腎皮質 にとっても開腹までして肝生検をしたにも関わらず 機能亢進症、甲状腺機能亢進症など）はしばしば肝 「肝臓に異常所見なし」と病理診断が下されたとき、 酵素値を上昇させる疾患であり鑑別診断が必要とな 飼い主に説明する言葉を失ってしまう。肝酵素値が る。これらの疾患が少しでも疑われた場合には、ま 上昇する可能性のある病気は数多く存在するが、問 ずSpec cPL（またはfPL）やACTH刺激試験、T4 診、身体検査、臨床病理学的検査、画像診断を駆使 測定（中高齢の猫）を行い、超音波所見と組み合わ して、最終的に「病変が肝臓に存在する」ところま せて総合的に評価する必要がある。また、若齢の猫 で除外診断、鑑別診断をすべきであると考えている。 ではFIPも隠れていることがあるため十分に注意す べきである。 除外診断と鑑別診断 　腹部超音波検査は肝酵素値上昇の動物では必須の 検査である。肝臓実質や胆嚢の評価だけではなく、 　肝臓病は好発の品種があることを知っておく必要 門脈、総胆管、膵臓、消化管、副腎、腹腔内リンパ がある。慢性肝炎はコッカースパニエル、ラブラドー 節は必ずチェックするように心がける。これらの臓 ルレトリバーで多く認められ、その他、ドーベルマ 器の評価には右肋間からアプローチすることで比較 ンピンシャー、ウエストハイランドホワイトテリア、 的容易に把握することができる。犬および猫で肝臓 スタンダードプードルも慢性肝炎を発症する割合が のエコー源性がびまん性に高エコーの場合にはま 多い。また、胆嚢胆管系はチワワ、ミニチュアシュ ずFNAを行い、肝細胞内に空胞（グリコーゲンや ナウザー、シェットランドシープドッグ