高エネルギー化を目的としたイオン加速装置の製作.pdfVIP

卒業論文要旨 高エネルギー化を目的としたイオン加速装置の製作 (環境計測) 西村 ゆりえ 1. はじめに 本研究室では、学生実験でイオンビーム加速の実験を行っている。現在、本研究室が所有して いるイオン源は、イオン源本体と引出電極の間に印加する電圧(引出電圧)でイオンを引き出し、 1) それを加速電圧としている。イオン源本体と引出電極の距離は、設計上 4 mm になっており、引 出電圧が高圧になるとそこで放電がおきてしまう。よって、現在の装置で行えるイオンビームの 加速は5 kVが限界である。そこで、本研究ではイオンビームの高エネルギー化を目的として、 加速電極を新規に製作した。この加速電極によって、イオン源とビームラインを絶縁し、イオン 源全体を昇圧して加速するシステムを設計した。電源回路には絶縁トランスを組み込んで20kV まで昇圧できるように改良した。 2. 装置概要 ? 製作した装置の概略図を図１ e に示す。図中の加速電極、１段 Ar+ 目の絶縁トランスが新たに追加 したものである。電子加速電源 系とイオン源電源系の間、イオ ン源電源系と加速電源の間に一 つずつ絶縁トランス(2 kV/200 VA,30 kV/200 VA)を組み、加速 図1. 装置概略図 電圧で昇圧されている電源系に 電力を供給できるようにした。 (電子引出電源系はフィラメント電源?電子引出 電源、イオン源電源系はイオン引出電源?レンズ 電源?デフレクター電源を表す。) 新しく設計製作した加速電極は図２に示すよ 図2. イオンシミュレーション うに、ステンレス製の二つの筒状の電極を組み合 わせたものである。加速電極には最大で20kVの電圧をかけるので、高電圧側の電極とグラウン ド側の電極の間隔を約2 cmあけ、放電を防ぐようにした。また、加速電極の電圧の高低差によ り図２の等電位線のようにバイポテンシャルレンズの効果が生じる。そのレンズ効果によってイ オンビームが発散しないように、イオン源から出たアルゴンイオンが描く軌道のシミュレーショ ンをSIMIONを使用して行った。シミュレーションの様子を図２に示す。加速電極のバイポテン シャルレンズは凸レンズの役割を果たす。よって、イオン源のアインツェルレンズで、バイポテ ンシャルレンズの焦点fの位置にイオンビームを一度収束させて、発散するイオンビームを加速 電極に入射させ、そのレンズ効果で平行ビームを形成させた。ファラデーカップのある、イオン 源から