第3節木材利用の推進（PDF1,022KB）.pdfVIP

第Ⅴ章　林産物需給と木材産業 3　木材利用の推進 　木材は、炭素の貯蔵や二酸化炭素の排出削減を通 じて低炭素社会の実現に貢献可能な資源であり、そ の利用の拡大を図っていくことが重要である。その 際、国産材の利用が促進され、山元へ収益が還元さ れれば、林業生産活動の活性化と森林の適正な整備 の促進が図られるという好循環につながることとな る。 　また、木材の利用に当たっては、地球温暖化防止 機能を最大限発揮させる観点から、木材に固定され た炭素が長期間にわたって貯蔵されるように、建築 物等の資材からボードや紙等としての利用を経て、 化石燃料を代替する燃料として利用するという多段 階での木材利用を進めることが理想である。 　木材は金属やコンクリートに比べ断熱性?保温性 に優れていることに加え湿度を調節する働きがあ り、結露などを抑制する。また、木材の香り成分が アレルギー性疾患を引き起こすダニの行動を抑制す る効果を持つことも知られている。これらの特性を 持つ木材は、人の健康で快適な暮らしを支える上で 有効な建築材料であるといえる。 　また、マンション等の非木造建築や住宅の修繕? 増改築等のリフォーム分野等でも、スギやヒノキ等 をフローリングやサッシ等へ利用する取組がみられ るなど国産材の利用拡大が進んでいる。 　しかし、木造住宅やマンションの内装等に関して は、国産材への消費者等の潜在的なニーズはある ものの、家を建てたい人等にとって必要な情報が手 に入りにくく、実需に結び付きにくいという状況に あった。このため、林野庁では、国産材を使った住 宅づくり等に対応可能な大工?工務店等や、地方自 治体等による支援措置などの様々な情報を一元的に 提供する情報サイトと相談窓口を平成 （ ） 年 月に開設した。平成 （ ）年 月末現在、 工務店や建築士事務所の登録件数が約 社とな るなど、住宅需要と国産材の供給を仲介している。 　一方、関係業界?学会?行政が一体となり住宅? 建築物への木材利用のより一層の促進を図ることを 目的として、国土交通省と林野庁の連携の下に「木 のまち?木のいえ推進フォーラム」が平成 （ ） 年 月 日に設立された。フォーラムでは、住宅? 建築物への木材利用の様々な課題や国土交通省?林 野庁等の関連施策等について幅広い意見交換を行っ ている。このほか、全国各地でリレーフォーラムを 開催するなど木材を活かした建築物?まちづくりに 関する情報の発信と気運の醸成を図っている。 　我が国の住宅の平均寿命は約 年であり、米国 の約 年、英国の約 年＊ に比べて、短期間で の建て替えが繰り返されているが、木材等の炭素を 長期間貯蔵する観点からは、より長期にわたって住 宅が利用されることが望ましい。 　このような中、平成 （ ）年 月、「長期優 良住宅の普及の促進に関する法律」が施行された。 本法に基づき基本方針を定めるに当たっては、配慮 事項に木材の利用が含まれたところであり、今後、 長期優良住宅に適した木材製品の供給の拡大が必要 となる。このため、林野庁では、長期優良住宅等の ニーズに対応した大断面集成材等の新たな製品等の 開発及び普及促進を進めていくこととしている。 　また、住宅メーカーにおいて住宅の標準仕様を長 期優良住宅の認定基準と同様にする動きや、地域の 木材と土塗り壁による伝統的工法を活かした長期優 良住宅の普及に取り組む動きもみられる。 　近年の外材をめぐる不透明な情勢や地球温暖化対 策等への環境意識の高まり、森林整備の必要性につ いての認識の広まりを背景に、住宅メーカーにおい て構造材等を外材から国産材に移行する動きが活発 化している。今後、住宅分野におけるこのような動 きを確実なものとし国産材の利用を促進するために は、国産材の流通の効率化?低コスト化や品質?性 能の確かな木材製品の安定的な供給体制の構築が重 要である。 ＊ 　国土交通省住宅局住宅政策課編集協力「 年（平成 年）度版 住宅経済データ集」 106 ?? 森林?林業白書（平成 年版） 　公共建築物等における木造の割合は約 割（着工 床面積ベース）と低位である。地域での展示効果や シンボル性の高い学校や交流施設等の公共建築物に おいて木材を利用することは、国民が身近に木造建 築物と接し、木材利用の重要性や木の良さの認識を 深める上で重要であり、民間への波及効果も期待で きる。 　公立学校施設は、児童?生徒が急増した昭和 年代から 年代に建築されたものが多く、老朽化 した建物が増加している。平成 （ ）年の文 部科学省の調査によると、建築後 年以上経過し た建物が全体の約 割を占めており、学校施設の老 朽化対策は重要な課題となっている。学校の設置者 で