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No.048　Spring 　前号に引き続き，この 3，40 年に会員が体験されたことを書き残していただきました．担当された分野，立場 によって，多彩な事柄が綴られています．内容そのものは時の経過にさらされて過去のものかもしれませんが， 時を経て再評価してみることは次世代への貴重な伝承技術の一部となることでしょう． 　なお，次号以降にも多くの方々にご経験談をお願いする予定です．（編集担当） 急に多様化した防水構法との闘い 学から明治大学に移られていた狩野春一先生で、浜田稔、 鶴田　裕 吉岡丹、波多野一郎、岸谷孝一先生ら、仕上げ以外の分 はじめに 野も加わったそうそうたるメンバーで構成された委員会 　平成 17 年 (2005) は、防水関係者にとっ だった。 て節目に当たる年であった。防水技術の権 　昭和 35 年に大手ゼネコンに創設されたばかりの技術研 威者であられる小池迪夫先生が東京工業大 究所?材料施工部門に入社がかない、程なくしたころ都内 学在任時に、「日本で最初に防水が施工さ の現場から「前日施工した塗布防水が夜来の雨で流され、 れたのはいつか」を探るために日本建築学会誌を時代を ドレンから側溝までアブクだらけになっている」との連絡 遡って調べ、辿りついた結果は明治 38 年 (1905) 竣工の が届いた。卒論や修論はやっと国産化が始まったばかりの 大阪瓦斯事務所で、中之島四ツ橋筋?渡辺橋南詰の角に ポリエステルやエポキシ樹脂の建築部材としての評価を 建てられた煉瓦造の屋根だった。清水組の設計（田邊淳 テーマにしたので、多少は承知していたつもりだったが、 吉工学士）施工で、アメリカから輸入されたアスファル 現場に出向いたものの “見物” の域を出ず、現場所長の「最 ト防水がこの建物の平屋部分の陸屋根に施工された。竣 近はこんな舌を噛みそうな商品名の材料が跋扈し始めてい 工した時は日露戦争に勝った時だったので、大変賑やか るので、技研でしっかり勉強しておいて呉れよ！」という なお披露目であったと大阪瓦斯の社史に記されている。 声で送り返された。この野次馬気分の現場行きがその後第 相前後して日本に鉄筋コンクリートが伝えられ、陸屋根 3 の人生までどっぷり浸かることになるとは夢にも思わな 普及とアスファルト防水の施工量の増加との関連につい かった。後で判ったことだったが、この時の液状防水材料 ても触れられている。＊ 1 は水が乾燥して防水被膜ができるタイプのもので、こうい 合成高分子防水材の登場 う防水材を昨今では塗膜防水というが当時は塗布防水と称 　それから約 50 年間はモルタル防水が補完的な程度で していた。塗布防水で痛めつけられた経験者は忌み嫌う用 使われたが、防水といえばアスファルトと同義語であっ 語の扱いをし、その後 15 年以上経って登場したウレタン た。その約 50 年後つまり昭和 30 年からの数年間は私の 防水まで凍結された工法であった。 在学期間で、たまたま大学から近くの学習院大学で前川 　入社後数年間は火力発電所の外壁パネルの目地に使用 國男氏設計のピラミッド状屋根の校舎建築が進められて する米国から輸入するポリサルファイド（チオコール） いて、折に触れ見学させて貰っていた。この将来を先取 シーリング材、東京オリンピックを控えてのホテルニュー りしていた工法にすっかり酔いしれてしまい