小中学生の脊柱検診の実施にあたって.pdfVIP

?改訂版 知っておきたい脊柱側弯症?からの抜粋 日本側弯症学会編 インテルナ出版 2003 年 小?中学生の脊柱検診の実施にあたって 側弯症などの脊柱変形を早期に発見する最大のメリットは、早い段階から適切な保健 指導や治療を始められることです。側弯症などの脊柱変形は小?中学生の時期に発生す ることが多いので、学校保健のプログラムの中に脊柱検診を含めることが有意義で、最 も効果的な側弯症対策です。このことから、学校保健法施行規則の一部が改正され、昭 和 54 年度から、児童?生徒の定期健康診断の一環として、脊柱検診が実施されるよう になりました。 １）検診前の準備 検診を行う前に、側弯症の正しい認識と、早期発見の必要性について、教師問で理解 を深め、さらに、お子さんへの事前指導と保護者への連絡などを十分に行うことが大切 です。 ２）脊柱検診の実際について(学校検診と精密検診について) 検診は、第 1 次検診(学校検診)と、第 2 次検診(精密検診)に分けられます。第１次検 診は、全生徒を対象にして視診による身体の非対称の検査、すなわち、立位と前屈検査 で 4 項目のチェックが行われます。この検診は簡便であり、学校医を中心として、養護 教諭やその他の職員の協力を得て行うなど、いろいろ工夫して行われています。モアレ トポグラフイー法を第 1 次検診に利用している施設もあります。 第 1 次検診で異常のおそれがあると判断されたお子さんについて、学校は速やかに保 護者に通達し、できるだけ早く、第 2 次検診、すなわち専門医の診察を受けるように連 絡します。専門医は必要に応じて、脊柱レントゲン写真を立位で撮影します。臥位での 脊柱レントゲン撮影では側弯は実際よりも軽度に写るため正確な判断を誤ることにな ります。 レントゲン撮影で側弯症などの脊柱変形が認められると、一般の神経学的検査、必要 に応じて平衡機能検査や MRI 検査など各方面からの検査が行われます。 学校検診で大切なことは、学校がこの第 2 次検査の結果を正確に把握しておくことで す。すなわち、診察の結果を、 ⅰ）治療を要するお子さん ① 直ちに治療する必要があるお子さん ② 専門の整形外科医による定期的な経過観察が必要なお子さん ⅱ）学校医、学校、家庭で指導?観察を続け、次回の定期健康診断で特に注意する必 要のあるお子さん ⅲ）正常の範囲とみなされるお子さん のいずれに分類されたかを保護者から連絡を受け、正確な情報を記録しておくべきです。 ３）検診後の指導について 第 2 次検診(精密検診)によって、異常と報告されたお子さんについては、学校医もし くは学校関係者が果たす役割はきわめて大きいと言えます。学校医、学校関係者はお子 さんおよび保護者に対し、早期に治療を受ける必要性を説明し、なおざりにしないよう、 また逆に、いたずらに不安を抱かせることのないよう、十分に理解していただく必要が あります。 専門医による診察の結果、側弯が 20～24°の軽度のものであれば、約 20%は何も治 療しなくとも改善し、約 60%のものは治療しなくとも進行しません。 しかし、残りの約 20%の側弯は進行性です。残念ながら、これらの側弯の予後を初 診時に判定することはできません。経過観察しながら、適切な治療法を決めることにな ります。この問、単なる牽引、ぶら下がり、指圧、マッサージ、カイロプラクテイスな どは、側弯の進行を防ぐ役には立ちません。 また、治療の必要がある場合には、多くは身体の骨が成長を続ける期間のみであるこ とを説明する必要があります。 治療中のお子さんは、医師から細かい指示を受けています。特に、装具治療では、装 具の装着時間を厳しく守る必要があります。自分の都合で装具をはずしてしまうと治療 の効果は得られません。 進行性の側弯をそれ以上進行させない方法としては、装具を使って側弯を矯正し、同 時にこの矯正した位置を装具で常に保っておくこと以外にありません。医療機関で定期 的な観察が必要とされるお子さんには、専門の整形外科医のもとで、定期的に診察を受 けるように指導することが大切です。 さらに、異常なしと報告されたお子さんについても、少なくとも中学卒業くらいまで の問は、毎年、定期的な脊柱検診を受けさせる必要があります。 また、定期健康診断以外でも、体重測定や水泳指導などの衣服を脱ぐ機会を利用して、 養護教員や担任教師などによる背部の観察が行われることが理想的です。 側弯症を早期に発見するには どのようにすればよいか 側弯症の発生を予防することは、まだできません。したがって、最も大切なことは、 側弯症を早期に発見し、きちんと経過を観察し、進行しないうちに正しい治療を始める ことです。 側