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愛知淑徳大学論集一文学部・文学研究科篇一　第27号　2002．・3　61－71 カウンセリング学習における マイクロカウンセリングの意義 一「マイクロカウンセリング」の学習過程を通して一 冨　安　玲　子 　　　　　　　　　　　　　　　　　1．はじめに 　カウンセリング学習はさまざまな形で行われているが、カウンセラー一クライエント関係 の訓練方法として開発されたプログラムの多くには共通した考え方がある。それは、カウン セリングの中核的なスキルを、熟達者のアートといった神秘的なものとしてではなく、具体 的な行為のレベルに分割して体系的に訓練し、習得することが可能なスキルとして捉えてい るということである。そうした訓練プログラムとしてよく知られているのがマイクロカウン セリング（金沢，1998）といえよう。 　マイクロカウンセリングは、カウンセリングの実践ならびに訓練のための体系的プログラ ムとして、1960年代後半にIvey，　A．　E．とその共同研究者によって開発されたものである。 カウンセリングのさまざまな理論において提唱されてきた技法等を総点検することによって 編み出された技法はヒエラルキー（マイクロ技法階層表）に構成されており、学習者は技法 を一つ一つ着実に、細密に、そして順番に一歩一歩系統的に学習していくことになる （lvey，　A．　E．，1974，1978，1983；福原ら訳，1985；福原，1991）。 　マイクロ技法とは、面接におけるコミュニケーションの技法の単位を指し、具体的には図 1のマイクロ技法階層表にあるように、先ず、その文化に適合したくかかわり行動〉を基盤 としている。次いでくクライエント観察技法〉〈開かれた質問と閉ざされた質問〉＜はげま し〉〈いいかえ〉〈要約〉と進み、〈感情の反映〉〈意味の反映〉までを基本的かかわり技 法として学習する。そこまでの土台の上に更に、〈焦点のあてかた〉〈積極技法〉〈対決〉 の習得を目指し、〈技法の統合〉が最終目標となる。これらの面接技法を習得することによっ て、さまざまなタイプのクライエントに対する瞬時の柔軟性と新しい対応を試みる能力が養 われ、より効果的な援助を可能にするのである。 　これらの技法は、理論的にどのような立場をとるかに関わらず、初心者が基本的技法とし て習得しておくべきものと考えられている（玉瀬，1998）。多くの理論や分野が、それぞれ のコミュニケーションの基本にこれらのマイクロ技法をさまざまな形で用いていることが知 られているが、Ivey，　A．　E．は、1997年に日本で開催された日本マイクロカウンセリング研 究会セミナーにおいて、「マイクロカウンセリングは折衷から生まれたが、時間の経過と共 に体系化が進んで、より体系立ったものになったものである」と説明し、その立場を「カウ 一61一 愛知淑徳大学論集一文学部・文学研究科篇一　第27号 ンセリング理論のメタ理論」として位置づけている。そして、次の8つのキーポイントを挙 げてマイクロカウンセリングの特徴を述べている。①理論と実践、これを共同で構築してい く　②クライエントと共にその心理療法、セラピーを作っていく　③すべての人すべての理 論の価値を認める　④経験的な質的データが肝要である　⑤統合メタ理論であり、正常な行 動、病的な行動の両方に対処できるものである　⑥欠点・弱点ではなく、強いところ・長所 に基づいてカウンセリングを進める　⑦個人はコミュニティの中にある家族、文化的な環境 の中にある家族の中で発達する　⑧文化を中心とした理論と実践である（福原，1998）。 　このような特徴をもつマイクロカウンセリングの技法習得の方法としては、①技法への気 一異なった理論は異なったパターンの技法の 使用法になる 一異なった状況下では異なったパターンの 技法の使用法を要求